「歴史」「完全食」「哲学」豚汁に愛着する理由
豚汁への愛着は、日常の習慣だけではなく歴史に根ざしている。豚汁のルーツは鹿児島の「薩摩汁」とされており、獣肉と根菜を組み合わせた栄養価の高い汁物として地域に根付いていた。その実用性は1909年、陸軍の炊事マニュアル「軍隊料理法」に豚汁が採用されることで全国規模へと広まった。極限状況でも食べ続けられた歴史が「体を作る食べ物」としての信頼を重ねてきた。
さらに遡れば、味噌汁そのものは鎌倉時代に調理法として確立されており、武士階級から庶民の食卓へと浸透した長い歴史を持つ。「災害大国日本の炊き出し定番」という声が今もXに上がるのは、この歴史的な蓄積の反映だとも言える。
「ご馳走ですね…災害大国日本の、炊き出し定番でもあります。いざという時の訓練として、地元自治会イベントでは、子ども会のお母さん達が調理担当したりします。栄養バランスが良く、良質な蛋白源が摂れる豚汁、最高です」
「おぉ海外の兄弟よ、それは豚汁(TONJIRU)という既存の味噌汁であり、タンパク質、アミノ酸、食物繊維、塩分をこの1杯で摂れる万能の汁物である 結論、それは「既に肯定されている」
このX上の声が示す通り、豚汁は栄養面でも際立っている。豚肉が動物性たんぱく質とビタミンB群を、大根・人参・ごぼう・こんにゃくが食物繊維とミネラルを、そして味噌が植物性たんぱく質・発酵由来の有効成分をそれぞれ供給する。腸内環境を整える発酵食品としての味噌の効能は医療機関でも研究が進んでおり、国立がんセンターの平山雄博士らによる疫学調査では、味噌汁を日常的に飲む人の胃がん死亡率が低いとの研究結果が報告されている。
一つの汁物でこれほど多くの栄養素を補える組み合わせは、豚汁が「好きなものを選んで食べる」だけでなく「体に良いものを自然と摂ることができる」食べ物として長く愛されてきた理由のひとつだ。
「スペシャルな味噌汁です!豚肉、大根、にんじん、ごぼう、日本酒、味醂などを入れて味噌で煮込む料理です。豚汁の場合は豚の旨みが強いので具材を加熱したあと、味噌を入れてもう一度加熱して完成となります。」
「日本の新潟県妙高市には豚バラと玉ねぎ豆腐だけで作る豚汁専門店がある。とんじるのたちばな。はい?いいえ?もちろんはい!YES!豚バラは味噌汁の中で独自のジャンル『豚汁』を構成してる」
「基本的に味噌汁に許容出来ない具材はほぼないですよ そして、豚肉入りの味噌汁は『豚汁』(Tonjiru)と特別に呼ばれ愛されています」
「一年中食べるけれど、特に寒い冬に食べると最高だよ」
野菜の甘みと豚肉の脂、味噌の塩分と旨味が溶け合う豚汁は、食べると不思議と心が落ち着くという心理的効果も持っている。身体を芯から温める力は、季節を問わず食べ続けられる理由として語られ、「災害時の炊き出し」という形でも机上ではなく実践として受け継がれてきた。
土井善晴氏が言語化した「一汁」の哲学
今回の大きな反応を食文化の視点から端的にまとめたのが次の一言だった。
「外国の人が『味噌汁にこれ入れるのか』ネタを頑張っても、すでに土井善晴さんが通った後の可能性があるんだよな」
料理研究家の土井善晴氏が2016年に刊行した「一汁一菜でよいという提案」(グラフィック社)は、国内で40万部を超えるベストセラーとなっている。「味噌は日本人の健康の要」「味噌汁さえ作ればなんとかなると思ってください」——一流料理家のこの言葉が日本の食卓に改めて光を当て、ご飯・汁物・漬物という三角形のシンプルな食卓の価値を現代の言葉で言語化した。
外国人が「発見」しようとする前に、日本人自身がすでにその深さを掘り返し、共有し直しているという指摘は、豚汁・味噌汁への愛着が感情だけではなく「自分たちの哲学として意識化された段階に達している」ことを示していた。

