
「あなたの言っていることは理解ができないんだけど」
裁判長からの言葉に川村葉音被告はまっすぐ前を向いたまま黙り込んだ。
それは質問の意味を理解しようと、答えを探しているようにも見えた。
彼らはどこまで理解しているのだろうか? 私がここまで裁判を傍聴していて疑問に思ったことだ。

死刑か無期懲役が原則の「強盗致死罪」 「金品をとらせれば終わると思っていた」
2024年、江別市の公園で大学生の長谷知哉(はせ・ともや)さんが激しい暴行を受けて死亡した事件。
長谷さんの交際相手、八木原亜麻(やぎはら・あま)被告、友人の川村葉音(かわむら・はおと)被告、瀧澤海裕(たきざわ・かいと)被告、川口侑斗(かわぐち・ゆうと)被告、当時16歳と17歳の少年ら合わせて6人は長谷さんからクレジットカードなどを奪い、暴行を加えて死亡させた強盗致死などの罪に問われている。
先月25日から川村被告・瀧澤被告・当時16歳だった少年の裁判員裁判が始まった。
3人は起訴内容を認めていて、量刑が争点となっている。
強盗致死罪は原則、死刑か無期懲役だ。

検察側は長谷さんの死因は全身の血液の20から30パーセントが流れ出たことによる外傷性ショックだったと指摘した上で「長谷さんの服に指紋が残らないよう全裸にした上で、たばこの火を押し付けるなど、暴行は2時間に及ぶ圧倒的長時間で執拗なものだった」と主張。一方、弁護側は3人は主犯格とされる川口被告に同調して暴行をしたと主張している。
川村被告の弁護士「川村さんの犯行は財物をとる目的ではない。目の前のことを何も考えずに行動していただけ。川口(被告)に金品をとらせたら終わると思っていた」
明らかになる事件当日の動き「たぶんボクシングをしている」
そもそも事件の背景にあったのは長谷さんと八木原被告との間での「交際関係」のもつれだ。
長谷さんは道外の会社に就職することを考えていて、八木原被告に1年後に別れることを告げた。
八木原被告がこのことを川村被告に相談したことがやがて事件へと繋がっていく。
裁判では事件当日の動きが詳しく明かされていった。
川村被告は、川口被告ら少年とともに、飛行機を見るために新千歳空港で遊んでいた。到着したときには展望デッキは閉まっていて、窓ガラスから空を飛ぶ飛行機を眺めていたという。そこへ川村被告のスマホに八木原被告から電話がきた。
電話をしているうちに川村被告は苛立ちを見せていった。川口被告はそれを見て楽しい雰囲気を「壊された」と感じ、川村被告から電話を受け取った。そこから聞こえてきたのは八木原被告ではなく、男の人の声―――長谷さんだった。
<川口被告の供述調書>
雰囲気を壊されていると感じたので高圧的な態度で話した。
「何やったの?」と聞くと「1年以内で別れる話」と言われたので、「は?」と言った。
(中略)被害者にどこにいるのか聞くと、ローソンということだったので「ローソンね、そこに行くから、なにもしないから」と言った。(八木原)亜麻の言い分も聞きたいし、二人の別れ話を解決したいと思っていた。
川村被告ら5人は車で新千歳空港から江別へと向かうことになった。川口被告は車の中で川村被告に長谷さんの特徴を尋ねることになる。
川村被告「どんなやつ?に対しては(川口)侑斗より身長低いと答えて、年齢は?については八木原さんから年上だと聞いていたので「21、22ぐらい」と答え、どんなやつに?に対しては「たぶんボクシングをしている」と答えました」
弁護士「実際に被害者(長谷さん)はボクシングをしていましたか?」
川村被告「いいえ」
弁護士「なぜ川口にそれを言ったんですか」
川村被告「川口くんはボクシング経験があるので、共通の趣味で会ったことがある人かもと思ったからです」
川口被告はこれを聞いて、江別市に着いてから公園でシャドーボクシングをして体を温めることとなる。


