博士修了者への期待と「不足感」のギャップ
こうした議論の背景を考えるうえで、日本能率協会コンサルティングと博士人材研究ユニットが2022年9月〜12月に実施した「博士修了者の採用に関する日本企業の意識調査」が改めて注目される。東京大学・筑波大学・関西大学・大阪公立大学産学官連携センター・博士人材研究ユニットの参画のもと実施された調査だ。
博士修了者の「良い点」として、最も多くの企業が「問題設定力(新しいことに取り組む姿勢)」を挙げ、123件の回答数は8割超に達した。一方で「チームワーク・リーダーシップ」「語学力」については「不足している」と感じる企業が多く、期待と現実のギャップとして示されている。
「どこの大学を出たか」には敏感でありながら、「大学で何を得たか」には鈍感という構造が続く限り、博士人材の専門知識が社会に還元される道は険しい。日本企業が修士・博士の専門知識よりも「即戦力感」や「チームワーク」を重視する傾向は、X上で繰り返し指摘された「学識より学校歴」という日本特有の評価軸とも重なる。精神科医の一言が引き起こした今回の議論は、「学歴社会」という言葉に覆い隠されてきた採用慣行と教育投資のミスマッチを、改めて問い直すものとなった。

