●「シンガポールは詐欺に利用されやすい」
──リクルーターや末端の関与者まで対象になるのでしょうか。
シンガポールは、詐欺グループに利用されやすい側面もあります。
多言語を操る人材が多いことから、中国やインドなどを拠点とする詐欺シンジケートのリーダーがシンガポールを活動拠点にしやすいという背景もあるようです。
外国にいる主犯格がシンガポール人を利用するケースも多く、銀行口座を提供するなどの形で末端が関与することがあります。
ただし、この制度では末端の実行役よりも、勧誘や組織運営に関わるリクルーターのほうが鞭打ち刑の対象となりやすい設計になっています。
──実際に鞭打ち刑が科された事例はありますか。
はい、実際に判決が出た事例があります。
2026年4月には、高齢者を狙った投資詐欺の「現金回収役(出し子)」を務めた23歳の男に対し、初の鞭打ち刑(1回)を伴う有罪判決が下されています。
●学校いじめに「鞭打ち」を明文化

──続いて、学校での「鞭打ち」について伺います。学校での体罰は広く認められているのでしょうか。
シンガポールの鞭打ち刑は、イギリス植民地時代にまでさかのぼりますが、学校での鞭打ちもまた、そこにルーツがあります。
1957年制定の「教育学校規則」第88条には、体罰は鞭打ちに限ると規定されています。
条文は次のような内容です。
(1)女子生徒に対して体罰を与えてはならない。
(2)男子生徒への体罰は、衣服の上から手のひらまたは臀部を軽い杖(鞭)で叩くことに限る。男子生徒に対しては、他のいかなる体罰も行ってはならない。
(3)学校に複数の教師がいる場合、体罰は校長のみが行うか、校長の明示的な権限の下で行わなければならない。
つまり、体罰全般を認めているのではなく、鞭打ちという特定の行為のみを認めているのが正確な理解です。
そして2026年4月、教育省(MOE)の発表は、法改正ではなく「運用の標準化」です。その過程で、いじめに対する鞭打ちの実施が明文化されました。
これまでいじめへの対応は学校ごとにばらつきがありました。今回はその標準化を目的とした運用方針の見直しです。
海外メディアでは「いじめっ子に鞭打ち」という点が大きく報じられましたが、シンガポール側としては制度の整備や運用の統一という位置づけになります。

