「蛋白尿」は放置NG? 腎臓病を早く見つけるために重要な健診項目とは

「蛋白尿」は放置NG? 腎臓病を早く見つけるために重要な健診項目とは

日本における慢性腎臓病(CKD)患者数は2015年時点で約1480万人、成人の約7人に1人が罹患していると推定されています。また透析患者は人口100万人当たり約2700人と世界的に見ても多い水準にあり、腎不全への移行を食い止める取り組みが急務とされてきました。すなわち腎機能評価の重要性が改めて注目されています。さらに、2027年4月1日からは一般定期健診の項目に同検査が追加される見込みとなりました。そこで今回は腎機能評価の正しい理解から、蛋白尿を放置しない重要性に至るまで、筑波大学大学院腎疾患重症化予防スポーツ腎臓学特任教授の山縣邦弘先生に堀江貴文氏との対談を交えて解説してもらいました。

山縣 邦弘

山縣 邦弘(筑波大学大学院 腎疾患重症化予防スポーツ腎臓学 特任教授)

筑波大学大学院医学医療系腎臓内科学・大学院腎疾患重症化予防スポーツ腎臓学分野 特任教授。日本腎臓リハビリテーション学会前理事長。専門は腎臓内科学。慢性腎臓病(CKD)の長期臨床研究であるFROM-J研究、Reach-J研究を主導し、その結果をもとに長期的な腎疾患の重症化予防や予後予測を実施。公益財団法人いばらき腎臓財団代表理事も兼任し、慢性腎臓病予防や腎移植普及のための「命の学習会」を主宰するなど、医療・教育・研究の三領域にまたがって精力的に活動している。

堀江氏

堀江 貴文(実業家一般社団法人予防医療普及協会 理事)

福岡県出身。実業家、著作家、投資家、タレント。東京大学在学中にライブドアの前身となるオン・ザ・エッヂを設立し、IT企業として急成長させる。プロ野球球団買収やニッポン放送への敵対的買収など、その型破りな手法で世間の注目を集めた。現在は、予防医療普及協会の理事を務め、医療業界にも携わるほか、ロケット開発を行うインターステラテクノロジズのファウンダー、会員制オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」の主宰、SNS media&consulting株式会社のファウンダーなど、宇宙事業、飲食業、メディア事業など多岐にわたる分野で活動している。

CKDの現状——日本の透析患者数が増え続ける背景

CKDの現状——日本の透析患者数が増え続ける背景

編集部

CKDとはどのような病気でしょうか?

山縣先生

CKDは、腎臓の働きが少しずつ低下していく病気です。初期にはほとんど症状がなく、気づかないまま進行することも少なくありません。重症化すると末期腎不全(透析や腎移植が必要な状態)に進行したり、同時に心臓血管病による死亡リスクが高まります。腎機能の指標である糸球体ろ過量(GFR:腎臓が1分間にどれだけの血液をろ過できるかを示す数値)の程度と、尿中に漏れ出る蛋白尿の程度を組み合わせて重症度が分類されます。

編集部

腎機能の低下は、腎臓だけでなく全身にも影響するのでしょうか?

山縣先生

腎臓病は心臓病の重大なリスク要因でもあります。腎機能の低下は、糖尿病や高血圧と並び、心筋梗塞や脳卒中のリスクと深く関係していることが分かっています。つまり腎臓の病気は腎臓だけの問題ではありません。

編集部

透析患者さんは現状どのくらいいるのでしょうか?

山縣先生

現在、人口100万人当たり約2700人が透析を受けており、日本人の約360人に1人、男性では70歳代が患者数の多い年齢層となっています。この数は世界的に見ても多い水準にあり、長年増加し続けてきました。新型コロナ禍以降はわずかに減少傾向が見られるものの、依然として深刻な状況が続いています。

編集部

透析が必要になる原因は、時代によって変わってきているのでしょうか?

山縣先生

現在、透析導入の最大の原因は糖尿病性腎症で、1998年頃から首位になっています。1980年代前半は慢性糸球体腎炎が原因の約60%前後を占めていましたが、学校・職場での検尿検診の普及で早期発見が進み、減少しました。さらに近年は腎硬化症(加齢や高血圧による腎血管の動脈硬化が原因で起こる病態)も増えており、時代とともに原因への対策の重点が変わってきています。

血清クレアチニン検査はなぜ再び注目された? 腎検診15年の変遷

編集部

日本では長く検尿検診が行われていますが、腎臓病の検診体制はどのように整備されてきたのでしょうか?

山縣先生

日本では、学校や職場での検尿検診が長年行われてきました。1972年の労働安全衛生法制定、1973年の学校保健法施行規則の改正、1982年の老人保健法制定などを通じて、年1回の尿検査が広く定着しました。さらにその後、一般定期健診に血清クレアチニン検査も活用されるようになり、腎機能を血液検査でも評価できる体制が整いました。

編集部

2008年の特定健診の導入に伴って、状況は変わったのでしょうか?

山縣先生

2008年に始まった特定健診は、生活習慣病の予防を目的として、40~74歳に対しメタボリックシンドロームに着目して行われる健診制度です。その中で尿蛋白検査は残されましたが、血清クレアチニン検査は基本項目から外れ、医師が必要と判断した場合に行う「詳細な健診項目」という位置づけになりました。

編集部

その後、なぜ再び注目されるようになったのでしょうか?

山縣先生

CKDは自覚症状がないまま進行することが少なくありません。そのため、腎機能の低下を早い段階で見つけることが重要です。近年は、血清クレアチニン検査によって計算される推算糸球体濾過量(eGFR)が、腎機能評価の重要な指標として改めて注目されています。

編集部

現在の健診制度では、どのように扱われているのでしょうか?

山縣先生

これまで、特定健診において、血清クレアチニン検査が基本的な健診項目に追加されることを期待しておりましたが、2024年度から始まった第4期特定健診では、いまだ血清クレアチニン検査が「詳細な健診項目」として位置づけられています。しかし、2027年4月1日からは一般定期健診の項目に同検査の追加が予定されており、腎臓病を早期発見する重要性が改めて認識されていると感じています。

配信元: Medical DOC

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