大腸がんは、早期発見・早期治療によって治癒が期待できる病気です。一方、「便潜血検査って本当に意味あるの?」「大腸カメラを受けるのが怖い」「どの病院で治療を受ければよいのか」など、疑問や不安を抱える人も少なくありません。そうした疑問や悩みに対し適切な情報を伝えるため、京都大学医学部附属病院消化管外科とNPO法人京都がん・消化器疾患ネットワーク「KUCCIE(クッキー)」は、2026年5月17日に市民公開講座「京都で大腸がんを学ぼう ~早く見つけて、早く治す~」を開催しました。本記事では、消化器の専門医4人による講演内容をもとに、検診の重要性、大腸カメラの実際、最新のロボット手術、病院選びやセカンドオピニオンの活用法について紹介します。
正しい情報を届けることが大学病院の責務
KUCCIE(クッキー)は、京都大学消化管外科の医師を中心に、がんの市民啓発と正しい情報発信、質の高い後進の教育を目指すために立ち上げられたプロジェクトです。現代で急速に普及したインターネットやSNS、生成AIを通じてがん関連情報を収集する人が増える一方、誤情報も氾濫するようになりました。だからこそ、大学や医療機関のような公的組織が、科学的根拠に基づいたがん情報を分かりやすく社会へ届けることがこれまで以上に求められています。
開会の挨拶を務めた京都大学消化管外科教授の小濵和貴先生は「玉石混交の情報の中から、正しい情報を困っている患者さんに届けることが我々の責務です」と述べました。
大腸がん検診はなぜ必要か?
5年生存率は早期なら9割、進行すると2割弱
大腸がんは早期に自覚症状がほとんどなく、血便や便秘、腹痛といった症状が表れるころには、すでに進行していることが少なくありません。消化管外科の後藤健太郎先生は、「5年生存率はステージ1で92%に上りますが、ステージ4では約18%にまで低下します。とにかく早く見つけることが大事な病気です」と早期発見の重要性を強調しました。
「京都人はもったいない」―検診受診率は4割にとどまる
早期発見の鍵となるのが大腸がん検診(便潜血検査)です。便に混ざる血液を検出することで、無症状の段階からポリープや早期がんを発見できる可能性があります。40歳から年1回受けられ、京都市における検診費用は300円(70歳以上などは免除制度あり)と、手軽さも魅力の一つです。
一方で、講演では「日本の大腸がん検診受診率は44.2%と世界でも低水準で、京都市はその中でも最下位レベルにある」というデータも報告されました。さらに、検診で陽性になっても、約3割が精密検査を受けないままだといいます。
「400年守り継がれてきた清水寺も、傷を早期発見して修繕してきたから今があります。人間で言えば便潜血陽性は体からの小さなサインです」と、後藤先生は検診を受ける意義を訴えました。
「観便」習慣を身につけ、異常があればためらわずに受診を
洋式トイレが普及した現代では、意識しなければ自分の排泄した便を目で確認する機会がほとんどありません。観便(便の状態をチェックする習慣)を身につけることは非常に大切です。そのうえで細い便・血便・下痢と硬い便の繰り返しなど気になる変化があれば、検診を待たずに大腸カメラができる病院を受診することが早期発見・早期治療において重要です。後藤先生は「『もともと痔があるから間違って検診で陽性になってしまったのでは』と放置する人もいますが、自己判断は絶対にやめてください。陽性と判定されたら、大腸カメラを受けていただく。これが何よりも健康を守ることにつながります」と強調します。
最後のまとめとして、後藤先生は大腸がん予防と早期発見に向けた以下3つの行動指針を提示しました。
40歳以上の人はできる限り毎年大腸がん検診を受ける
検診で陽性になったら「必ず」大腸カメラを受ける
観便を習慣化し、異常があれば受診する

後藤健太郎先生

