大腸カメラはどんな流れで行われる? 苦しくない?
「下剤を飲むのに抵抗がある」「大変そう」「痛そう」「恥ずかしい」というイメージから受診をためらう人が多い大腸カメラ。日々この検査を行う消化器内科の内海貴裕先生は講演の冒頭、「不安な気持ちを安心に変えたい」と患者さんへの思いを述べました。
がんに対する「攻めの予防」――大腸を直接観察、同時治療も
大腸カメラの最大の特長は、その場で組織の一部を採取する生検(病理検査)やポリープを切除できる点です。がんが疑われる病変の確定診断から前がん病変の治療までを一度の検査で進めることができるのが、大腸カメラならではの大きな強みです。
「便潜血検査や大腸CT検査と異なり、大腸がんやその前兆を見つけるだけでなく、病変をその場で治療できる唯一の検査といえます」と内海先生は説明します。実際に、米国で行われた「National Polyp Study」という研究では、前がん病変であるポリープ切除によって大腸がんの発生率が76〜90%、死亡率が53%減少したという結果が報告されました。すなわち、ポリープ切除は大腸がん予防に直結することが科学的に証明されているといえます。
下剤の改良、痛みへの鎮静…検査への「不安要素」は格段に軽減
受診の障壁となる「不安」の主な要因は、下剤と痛みです。そのような不安を抱える患者さんのために、下剤については近年さまざまな選択肢が増えています。
たとえば、味に関しては梅風味・レモン風味・スポーツ飲料風味などバリエーションが豊富にあり、大量の液体を飲むのが難しい方に向けた錠剤タイプも登場しています。地域によっては便漏れやプライバシーに配慮した個室で下剤を内服できるクリニックも増えており、環境面での不安は以前より格段に軽減されています。
また、痛みへの不安に対しては、鎮静剤(睡眠薬)の使用や細い内視鏡の選択など様々な工夫が凝らされています。鎮静剤を使う場合は休憩時間が必要となり、検査当日の運転はできなくなるなど一定の条件があるものの、「うとうとしている間に楽に検査が終わる」というメリットがあります。
また、検査時に二酸化炭素を使用することで、空気を使用した場合と比べて検査後のお腹の張りを速やかに軽減する工夫や、プライバシーに配慮して検査時に部分的に穴が開いた専用のパンツを着用するといった取り組みもなされています。
「昔に比べると大腸カメラはかなり負担の少ない検査になってきています」と、内海先生は現場目線で大腸カメラの進歩を解説。さらに「大腸カメラをやらないリスクとやる不安、どちらを選びますか。検査の内容を知ることで不安は減らせます」と、まだ大腸カメラを受けたことのない人への受診を促しました。

内海貴裕先生
ロボット手術は何がすごい? 治療の流れと特徴
大腸がんは、大腸内で腫瘍が大きくなる(T因子)、近くのリンパ節に転移する(N因子)、別の臓器に転移する(M因子)という3つのファクターがあり、この3因子をもとに治療方針が立てられます。下部消化管のロボット手術を専門とする板谷喜朗先生は、大腸がんの進行と治療全体の構造について解説しました。
大腸がんの3つの治療選択肢「手術」「放射線」「化学療法」
治療の選択肢は大きく3つあります。
1、手術: 全身転移前の大腸がんに効果的な治療法
2、放射線治療: 直腸がん治療において特に広く行われており、肛門付近のがんでも肛門の機能温存を目指す際の強い味方
3、化学療法(抗がん剤治療):手術でがんが取り切れない場合や術後の再発抑制において適応される。目に見えないがん細胞を抑制
このうち今回の講演では、手術を中心に解説が行われました。
「器用」で「目が良い」手術ロボット
一般的な大腸がんの手術は、がんとリンパ節を取り除く「切除」と上流・下流の腸を元通りにつなぎ直す「再建」の2ステップから成ります。手術をより安全・精密に行うための手段の一つが、ロボット手術です。「京都大学では術中に大画面モニターを用いて内部を拡大観察しており、従来の肉眼手術とは次元の異なる視野が確保できます。毛細血管やリンパ節の位置を一目で把握できるのみならず、1人で3本のアームを同時操作するため、細かい作業も1人で完結できることが大きな特徴です」と板谷先生はロボット手術の特長を説明しました。
さらに、どれほど器用であるかを示す実演として「米に文字を書く」デモ映像が会場で披露されました。映像は板谷先生が実際にロボットを操作して撮影したもので、米一粒に漢字や熟語を書けるほど精密な操作も可能であることが示されました。
「『全ては患者さんの笑顔のために』をモットーに、より小さな傷、少ない痛みで実現できる大腸がん治療の方法を模索し続けています」と板谷先生はさらなる治療の低侵襲化を展望しました。

板谷喜朗先生

