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絵でみるシェイクスピア第2弾。野望、嫉妬、老い、そして赦しの物語

『リア王』:崩れゆく権力、そして家族

真心を見抜けなかった老王・リア

エドウィン・オースティン・アビー『リア王 第1幕第1場』エドウィン・オースティン・アビー『リア王 第1幕第1場』, Public domain, via Wikimedia Commons.

ブリテンの王・リアは、3人の娘に領地を配分し、王位を退く決断をします。そこで、3人のうちどの娘が親孝行であるか判断するため、それぞれに父親への愛を語らせることにしました。

長女のゴネリルと次女のリーガンは言葉巧みにリアへの愛を語りますが、リアが最も可愛がっていた末娘のコーディリアだけは美辞麗句を好まず、そっけない言葉を口にしただけでした。

この態度に激怒したリアはコーディリアを勘当してしまいます。さらに、コーディリアを擁護した忠臣・ケントまで追放し、ゴネリルとリーガンにすべての領地を譲ってしまったのでした。

エドウィン・オースティン・アビーの『リア王 第1幕第1場』では、リアに勘当されたコーディリアが、フランス王に求婚されて宮殿を後にする場面が描かれています。

コーディリアは2人の姉に父を大切にするように忠告しますが、向かって左側に描かれたゴネリルとリーガンは白けた顔で妹を見ています。そして、この時のリアの判断が、のちに取り返しのつかない悲劇を巻き起こすのです。

『リア王』嵐のなかの老王が、現代の私たちに問いかけるもの

ジョージ・フレデリック・ベンセル『リア王』ジョージ・フレデリック・ベンセル『リア王』, Public domain, via Wikimedia Commons.

王位を退いたリアは、まず長女ゴネリルのところへ身を寄せます。ところが、待っていたのは親孝行とはとうてい言えない冷たい仕打ちの数々でした。

怒ったリアはゴネリルの領地を後にし、次女のリーガンの元へと向かいます。しかし、ここでも冷遇されたことに耐えかねて、大嵐の荒野へと飛び出してしまうのでした。

ジョージ・フレデリック・ベンセルの『リア王』では、嵐の中で運命に怒り狂うリアと、彼のお付きである道化の姿が描かれています。当時の宮廷では、道化は王の心を慰める重要な存在でした。

あなたは、嵐に打たれながら嘆き悲しむ老王が描かれたこの作品を見て、どんな気持ちになるでしょうか。

実は『リア王』には、老いや認知症、血縁をめぐる葛藤や遺産相続など、現代の私たちにとっても身近なテーマがふんだんに組み込まれています。そのため、今でも世界中の多くの劇団がこの作品を上演し続けているのです。

『テンペスト』:嵐のあとの、再生と赦し

復讐を企む魔法使いが、本当に望んだもの

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『ミランダ』ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『ミランダ』, Public domain, via Wikimedia Commons.

ここまで『マクベス』『オセロー』『リア王』と、シェイクスピアの戯曲の中でも非常に有名な「悲劇」を紹介してきました。

最後に紹介するのは悲劇ではなく、「ロマンス劇」のひとつ『テンペスト(あらし)』です。

ミラノの大公であったプロスペローは、魔法の研究に没頭しているあいだに弟アントーニオによって失脚させられます。

孤島に追いやられ、娘のミランダと共に12年の時を過ごすプロスペローでしたが、ある時、魔法の力によって弟やナポリ王が乗る船を難破させることに成功します。

遭難した一行が島に流れ着くと、プロスペローは妖精のエアリエルに命じ、ナポリの王子ファーディナンドとミランダが恋に落ちるように仕向けます。そしてファーディナンドに過酷な労働を課し、愛の試練を与えるのでした。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスによる『ミランダ』は、難破する船を見つめるミランダを主役にした作品です。
荒れ狂う海と難破船を見つめる彼女の表情は描かれておらず、鑑賞者の想像を掻き立てる1枚に仕上がっています。

『エアリエルに誘惑されるファーディナンド』物語のキーパーソンを描いた妖精画

ジョン・エヴァレット・ミレイ『エアリエルに誘惑されるファーディナンド(第1幕第2場)』ジョン・エヴァレット・ミレイ『エアリエルに誘惑されるファーディナンド(第1幕第2場)』, Public domain, via Wikimedia Commons.

ジョン・エヴァレット・ミレイによる『エアリエルに誘惑されるファーディナンド(第1幕第2場)』。島に遭難して皆とはぐれてしまったファーディナンドが、エアリエルの歌声に誘われてミランダの元へと導かれる場面が描かれています。

この作品は、ヴィクトリア朝時代の代表的なアートムーブメント「ラファエル前派」に属しますが、その中でこうした妖精画は非常に珍しいものでした。

エアリエルは『テンペスト』のなかで重要な役割を果たすキャラクターです。プロスペローの右腕的存在として大活躍し、物語を大きく動かすのです。

『テンペスト』の最後、プロスペローはかつて自分を陥れた人々を赦し、ふたたび大公へと戻ります。大団円、つまり「めでたしめでたし」で幕を閉じますが、この結末にはエアリエルの存在が欠かせません。

エアリエルもまた、最後にはプロスペローから解放されて自由を手に入れるのでした。

配信元: イロハニアート

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