自分らしさを求める中年男性
議論に深みを加えたのが、流行史からの考察だ。
「記憶違いかもしれないけどあの手のクソダサボディバッグは 15年ぐらい前にオロビアンコのボディバッグが流行→デザインだけ真似たような紛い物がファミリー向けモール中心に大量に売り出される→機能性からファッション興味無い男性御用達として定着という流れだったんじゃないかなと記憶してる」
「ボディバッグ問題はデザインの問題じゃないんだよね かつてボディバッグが『おじさんに大量に普及』したが故に『ボディバッグは(ファッションに無頓着な)おじさんのアイテム』という『記号』として女性に認知されたのよ デザインの良し悪しなど関係なく総じて忌避される結果になった」
「おじさんのボディバッグダサい論はファッションの一周が起きた結果じゃないかなあ。うん10年にウェストポーチが流行りまくった末に滅んだようなもん」
バッグブランドHushTugのアンケートでは、約9割が「ボディバッグはダサくない」と回答している一方、「ボディバッグを使っている人に中高年層が多いことから『おじさんっぽい』というイメージが定着した可能性がある」とも指摘されている。
この論争と同じタイミングで発表された、オンワードホールディングスが5月に全国の20〜70代男性を対象に実施した「男性の服装・身だしなみに関するアンケート調査」にも注目が集まった。
この調査によると、「ここ3年〜5年でファッションへの関心がどう変わったか」という設問に「大きく高まった(17.5%)」「やや高まった(36%)」を合わせ、男性の2人に1人以上が高まったと回答。「積極的に楽しんでいる(23.8%)」と「楽しみたいが時間・予算が追いつかない(36.3%)」を合わせた「おしゃれを楽しみたい」層も60.1%と6割を超えた。
関心が高まったきっかけの1位は「年齢を重ねて自分の好みが定まってきた(36.0%)」で、2位のパートナー・彼女からの影響(28.1%)、3位の仕事・職場での印象管理(23.8%)を大きく上回った。年代別の「装いのゴール」では、40代の最多回答が「個性・自分らしさを表現したい(30.7%)」となり、20代の「清潔感・信頼感を出したい(41.5%)」や30代・50代・60代で多かった「若々しく見せたい」とは異なる傾向が示された。
この「自分の好みが確立してきた」という動機は、機能性を優先して自分に合ったものを選び続けるという構図、つまりボディバッグ論争と重なる部分がある。「ダサいダサくないの論争から解放されている」という声がX上で広く共感を呼んだのも、この調査が示す「自分らしさ重視」に重なる部分があるのかもしれない。
「ボディバッグおじさんの件、結局は男が身につけて似合うバッグを最後まで発明できなかったファッション業界全体の敗北だと思う」という指摘が強く共感された背景には、ファッションへの関心を高める一方で「自分に合った実用的かつスタイリッシュな選択肢」が限られているという中年男性の実態を浮き彫りにしたともいえる。

