京都大学医学部附属病院消化管外科は2025年、持続的な市民への疾患啓発活動と後進育成を行う目的で「特定非営利活動法人 京都がん・消化器疾患ネットワーク(KUCCIE)」を立ち上げました。この背景には、「医療情報が届きにくい人にこそ、正しい情報を届けたい」という思いがあると、KUCCIEのプロジェクトリーダーの一人であり、SNSでは『外科医けいゆう』のペンネームでも知られる同科特定助教の山本健人先生は説明します。今回は山本先生に、本プロジェクトの狙い、発足経緯、今後のビジョンについて聞きました。

監修医師:
山本健人(医師)
日本消化器外科学会消化器外科専門医。専門は大腸がん。京都大学卒業後、市中病院勤務を経て同大学院にて博士号を取得。消化器外科医として勤務する傍ら、医療情報の発信や執筆活動を精力的におこなう。現在は京都大学医学部附属病院消化管外科に勤務。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、内視鏡外科技術認定医、ロボット支援手術認定プロクターなど。
「医療に関心のある人だけ集う会」からの脱却を目指して
これまでの市民公開講座には、本当に情報を届けるべき人に来ていただくのが難しく、もともと医療リテラシーの高い人たちが集まる場になりやすいという欠点がありました。つまり、「もともと医療に詳しい人がもっと詳しくなる会」になってしまうのです。
この状態を回避するため、KUCCIE(クッキー)が主催し、2026年5月17日に大腸がんをテーマに開催された第1回市民公開講座は、あえて「医療者だけで作る」ことをやめました。「この人の話を聞きたい」と思ってもらえる発信力のある人に入ってもらうことにより、より広い層へ情報を届けられるのではないかと考え、認定NPO法人キャンサーネットジャパンの理事を務められる中井美穂さんに総合司会をお願いしました。このほかにもSNSでの事前告知や、一般の人に関心を持ってもらえる講演内容のブラッシュアップなどあらゆる工夫を重ねた結果、告知開始から3週間で参加登録者は現地・配信合わせて390人に達しました。

意欲と使命感だけでは続けられなかった
2018年から開催してきた市民講座「SNS医療のカタチ」(後に「やさしい医療のカタチ」に改名)は、4人の仲間と手弁当で続けてきた活動でした。
意欲と使命感があったからこそ続けられましたが、こうした個人の熱意に依存する活動には、以前から持続性の課題を感じていました。後輩を誘ったとき、まったく報酬のない奉仕活動を社会貢献として続けてもらえるだろうか。やはり個人の熱意だけでは限界があるのだろうか……と。
こうした背景もあり、いつか大学に赴任する機会があれば、大学を主体にした活動を進めたいとずっと考えていました。そして2025年、京都大学への赴任が決まったことを機に、正式団体としての市民啓発を本格的に始動します。
ただ、組織として動かすには、ある程度のお金が必要です。そこで赴任直後に日本癌治療学会とファイザーが共同で公募している「Quality Improvement Grants(医療の質向上助成プログラム)」の『がん情報の均てん化プロジェクト』という助成金を申請しました。結果、申請書が採択され、同じ志を持つ仲間たちとともにKUCCIEを発足することになります。

