座りっぱなしの状態が続くとどんなリスクがある?メディカルドック監修医が座りっぱなしによる腰痛の原因や発症しやすい病気・対策などを解説します。

監修医師:
菊地 修司(医師)
山梨大学(旧・山梨医科大学)医学部医学科卒業後、茨城保健生活協同組合城南病院に研修医として入職。東葛病院外科、北海道勤医協中央病院麻酔科で研修後、城南病院に戻り、医局長、副院長を経て、2021年より同院院長。2024年より茨城保健生活協同組合理事長を兼任。専門は総合診療・訪問診療。2009年に消化器外科から総合診療科に転科し現在に至る。日本医師会認定産業医。
座りっぱなしの状態が続くとどんなリスクがある?

日本人は世界20カ国の中で座位時間が最も長いことがわかっています。私の外来にも「一日中デスクワークで動けない」とおっしゃる患者さんは多いです。ここでは座りっぱなしで高まる代表的なリスクを5つ紹介します。
死亡リスクの上昇
1日の座位時間が長いほど、全死亡リスクが高まります。1日11時間以上座る人は4時間未満の人と比べて死亡リスクが約40%上昇するというデータがあります。さらに、運動習慣があっても、座りすぎによるリスクは完全には打ち消せません。
肥満・メタボリックシンドロームの促進
長時間座っていると、下半身の大きな筋肉がほとんど動きません。その結果、脂肪分解酵素の働きが低下し、糖代謝も悪化します。テレビ視聴が1日2時間増えるごとに肥満のリスクが23%上がるとの研究もあります。外来で生活習慣を聞くと、「通勤がなくなって太った」という方は本当に多いです。
血行不良による下肢のむくみ
座ったままでは脚の静脈血が心臓に戻りにくくなります。血管の周囲に水分が染み出し、むくみ・だるさ・しびれの原因になります。ひどくなると深部静脈血栓症の引き金にもなります。
腰痛の悪化
座位では立位に比べて椎間板への圧力が約1.4〜1.85倍に増加します。外来でも「座っていると腰が痛くなる」という訴えは非常に多いです。詳しい原因は次の項目で説明します。
メンタルヘルスの悪化
1日12時間以上座っている人は、6時間未満の人と比べてメンタルヘルス不調のリスクが約3倍に上がるとの調査結果があります。体を動かさないと脳への刺激が減り、気分の落ち込みや意欲低下につながります。
座りっぱなしの状態が続くと腰痛を引き起こす原因

椎間板への持続的な圧迫
背骨と背骨の間にある椎間板は衝撃を吸収するクッションです。座位、特に前かがみの姿勢では椎間板にかかる圧が大きく高まります。長時間この圧迫が続くと、椎間板の線維輪に炎症が生じて腰痛を引き起こします。
体幹の筋力低下
座りっぱなしでは、腹筋や背筋がほとんど使われません。体幹の筋力が落ちると腰椎を支える力が弱まり、少しの動作で痛みが出やすくなります。私の外来でも、在宅勤務が始まってから腰痛が出たという方が増えています。
骨盤の後傾と姿勢の崩れ
椅子に浅く座って背もたれに寄りかかると骨盤が後ろに倒れます。この姿勢は腰椎の自然なカーブを失わせ、椎間板や靭帯に偏った負荷がかかります。
血行不良による筋肉の硬直
座ったまま動かないと、腰回りの血流が低下します。筋肉に十分な酸素と栄養が届かず、こわばりや痛みの原因になります。冷房で体が冷えるオフィス環境では、さらに悪化しやすくなります。
股関節の柔軟性の低下
座りっぱなしでは、股関節が常に曲がった状態が続きます。腸腰筋(腰と太ももをつなぐ筋肉)が短縮・硬化し、立ち上がる際に腰を反らせる形で負担がかかってしまいます。股関節の柔軟性低下は腰痛の見落とされやすい原因の一つです。

