●「これまで人を信じて生きてきたのに」
被害者は90歳だった。
息子が会社の400万円をなくしたため、その半額の200万円を工面してほしい──。そんなウソの話を信じ、現金を手渡したという。
法廷では被害者の心情も明かされた。
「これまで人を信じて生きてきたのに」
90歳という年齢を思うと、その言葉はいっそう重く響いた。
●借金問題を相談することなく
弁護側の情状証人として、被告人の夫が出廷した。
車いす姿の夫は、病気で足が不自由となり、現在は施設で生活している。
夫は被告人が特殊詐欺に関与していることに気付いていた。夫婦で自己破産を検討する中で、被告人の口からは特殊詐欺という言葉も出ていたという。
夫は言葉では止めたものの、携帯電話を操作していた被告人を強く追及することはできなかった。
一方で、借金問題について専門家へ十分な相談はしていなかった。
収入もほとんどない中、法廷では弁護人から、10年ほど返済していない借金については時効の可能性もあると指摘される場面もあった。
借金問題についてもっと早く相談していれば──。夫も被告人も悔やむような表情を見せていた。

