●報酬は得られず、残ったのは刑事責任だけ
被告人は結局、今回の特殊詐欺で報酬を受け取ることはなかった。
特殊詐欺事件の法廷では、「報酬ほしさに加担したが、結局ほとんど金は手にできなかった」という話を耳にする。
目先の金に引き寄せられ、重大な犯罪に手を染めた結果として残るのは刑事責任だけというケースは少なくない。
金銭管理が苦手だったという被告人は現在、地域生活定着支援センターの支援を受けている。出所後は夫との同居も予定しており、福祉的支援を受けながら生活再建を目指すという。
一方で、被害者が失った老後資金の返済の見通しは立っておらず、現時点でできているのは謝罪文の作成だけだ。
●息子から言われた「相続放棄すればええやろ」
法廷で検察官は犯行の動機について尋ねた。
被告人は自己破産という制度を知っていたものの、今後の生活にどう影響するのかわからず、深く調べることもなく自己破産はあきらめたという。
検察官:自分は子どもに借金を残したくないとして、それで同じ高齢者の被害者に迷惑をかけることをどう思っていたんですか。
被告人:そのときは指示通りにしないと、どうなるかわからなかったんです。
検察官:どうなるかとは。
被告人:実際、詐欺グループに脅迫もされました。
しかし、その説明には無理があった。
脅迫を受けたのは、詐欺グループへの現金引き渡しを拒否した後のことだったからである。
さらに印象的だったのは、息子とのやり取りだった。被告人によると、息子からは事件前にこう言われていたという。
「アホか。相続放棄すればえぇんやろ」
借金を残されたくない当の息子は、別の解決策を示していた。それでも被告人は犯行を止めることができなかった。

