見えない世界に声という色を付ける。〖音声ガイド〗へのこだわり
そんな和田さん、紆余曲折を経てバリアフリーの映画館、
「Cinema Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)」の支配人になることに。
そこで、映画業界の厳しい現実にぶつかります。
日本では音声ガイドに対応した映画がまだ少なく、邦画でも対応作品はごくわずか。
バリアフリーの映画を観たくても観られない人がいる状況が続いているといいます。
「ないなら、自分で作ろう」

そう決意した和田さんは、周囲からアドバイスを受けながら学び、恩人である音響監督にも支えられ、目の不自由な人のための音声ガイド制作の仕事を始めました。
驚いたのは、そのこだわり。
和田さんが目指したのは「情報として正しい音声ガイド」だけではありませんでした。
「音声ガイドそのものがエンタメであってほしい」
和田さんが大切にしているのは、韻の響きや言葉のリズムでした。
能率は二の次。情景が浮かべば良い、というところに留まらず、母音や子音の組み合わせまで考え抜きながら原稿を書くそうです。
私も実際にAmazonプライムで配信されている「ルックバック」という作品を、音声ガイド付きで鑑賞してみました。
なんとこの話題のタイトルも和田さんが音声ガイドを担当しているのです!
聞いてみて感じたのは、耳心地の良さ。
劇半や効果音、セリフを決して邪魔することなく差し込まれる説明は、聞いていてとてもワクワクしました。

その結果、「和田さんの音声ガイドは面白い」と評判になり、全国から依頼が寄せられるように。
その作品がより輝けるようにするにはどうすればよいのだろうか?
常に作品へのリスペクトが注がれる和田さんの音声ガイドは、今も多くの人にエンタメを届けています。
『エンタメ格差』のない益田市に
そんな和田さんが、縁あって引き継ぐことになったのが小野沢シネマ。
和田さんが支配人を務めていた東京の映画館に訪れた益田市出身の女性から、
「祖父がかつて経営していた益田市の映画館を復活させたい」と相談を受けたといいます。


和田さんの妻・更沙さんは益田市出身。
子供の頃、小野沢シネマでよく映画を見ていたといいます。
人口減少が進む地元に心を痛め、何かできないかと考える更沙さん。
そして、エンタメは平等に届くべきであると考える和田さん。
二人の想いは小野沢シネマの復活へと動き始め、益田市への移住を決意。
コロナの影響を受けながらも2021年より本格的にプロジェクトを始めたのです。

資金調達のためにクラウドファンディングを実施すると、映画館の復活を喜ぶ多くの人が協力してくれました。
映写室を新設し、デジタル映写機も導入。2022年1月26日、小野沢シネマの幕が再び上がりました。

SNSの発信だけではなく各地でチラシを配るなど地元に寄り添う形で、老若男女すべての人に映画館の存在が行き渉るように工夫をしたといいます。


