『益田で映画館なんて儲かるわけないじゃん』聞こえてきた厳しい声
10万人当たりに1館で採算がとれると言われている映画業界。44000人の益田では難しいのが現状です。
『こんなところで映画館なんてやっても儲かるわけないじゃん』という厳しい声が聞こえたこともあったそうです。

「実際、収入の面だけ考えると、音声ガイド一本に絞った方が稼げるんですよ」と笑って話してくれた和田さん。
全国から和田さんの音声ガイドを求める声が増え、音声ガイドの収入で生計を立てられるようになったことから、
映画館の赤字を音声ガイドの収入で補填。ほぼ慈善事業で映画館を運営している形に。
どうしてそこまでして、益田に映画を届けるのか?
そう尋ねた時、和田さんはご自身のお子さん、そして益田の子供たちへの想いを話してくれました。

きっかけは、2歳の娘さんと映画を見たこと。
子供向けのアニメーション映画とはいえ、まだ2歳。途中で飽きてしまうことも覚悟の上で見せたところ、
約100分の映画を最後まで楽しんだといいます。
一度もぐずることなく、『楽しかった』と喜ぶ娘の姿に、
「どんな子供たちにも『非日常』に連れて行ってくれる映画館という存在は必要だ」という思いが強くなりました。
和田さん夫妻が益田市に移住し小野沢シネマを復活させたのはコロナ禍真っ只中の2021年。
益田の子供たちはコロナ禍でどこも行けず、誰とも会えず、ただ家でネットだけ見て過ごすのか?
多感な時期こそ、そんな日々を過ごさせるわけにはいかない。意地とプライドが背中を押しました。

都会では、観たい映画を沢山観ることができます。
話題作も、ミニシアター作品も、少し電車に乗ればたどり着ける場所があります。
一方で地方では、その選択肢すら持てない場合も。
和田さんは、それを「エンタメ格差」と表現していました。
だからこそ映画館を残したい。
自分がかつて映画や音楽に支えられたように。
益田の子どもたちにも、映画が心の支えになる瞬間があってほしい。

私の地元である浜田市にも小さな映画館がいくつか存在していましたが、時代と共に閉館してしまいました。
そのため、幼い頃は見たい映画があるたびに、母が広島の映画館まで車を走らせてくれたという思い出があります。
ファンタジーやドキュメント、画面の向こうに夢中になる特別な時間は、今の私を形作るには十分なものでした。
だからこそ、益田市の映画館が復活したというニュースは大変喜ばしく、いつか小野沢シネマで映画を見たい!という思いから始まった今回の取材。

サブスクで簡単に映画を見られる時代、ショート動画が好まれる「タイパ」の時代にこそ、
誰にも邪魔されず、途中で止めることもできない、映画館という箱で映画の世界に没入すること。
そして、人の手から生み出されるエンタメに心を打たれるという経験。
子供の頃に経験したそれらは、必ずその後の人生を豊かにしてくれます。
その豊かになった心はまた何かを生み出し、次の世代へエンタメを届ける。
バトンを渡すように、絶やしてはいけないエンタメの炎を繋いで。

「今まで色んな人に助けられて、ここまでやって来れた。
全力でやった結果が数年後、十年後、もしくはもっと後に巡り巡ってくるかもしれないから、映画館も少しも手を抜いては行けない」と笑って話す和田さん。
何分後、何年後の自分が笑っていられるために。
全ての人を笑顔にするべく、今日も小さなシアターは開館しています。
施設情報
住所:〒698-0027 島根県益田市あけぼの東町2-1 小野沢ビル3F (益田駅から徒歩約7分)
TEL/FAX:0856-25-7577
mail:onozawacinema@gmail.com
料金:一般:1,800円 シニア(60歳以上):1,200円 大学生:1,500円 中高校生:1,000円
三歳以上:700円 バリアフリー割引:1,000円
※定休日:月曜・火曜(月火が祝日の場合も基本的には定休としています)
営業時間:水曜~日曜 9時30分~19時30分
駐車場:無料平面駐車場完備(80台収容)

