企画展『はじめての古美術鑑賞 ―美術のなかの文字―』展示室入口
絵の片隅に残された印から歴史が見えてくる
重要文化財『竹雀図』 伝 牧谿筆 中国・元時代 13世紀 ※5月30日(土)~6月21日(日)展示
絵のなかにある文字として、最初に思い浮かぶのは画家の署名や印である落款(らっかん)です。ただ一口に落款といっても、その表現は画家の個性を反映するかのようにさまざま。また古い仏画のようにもともと落款がないものや、捺された印が画家本人ではなく、将軍や大名などの所蔵を示す館蔵印の場合もあります。
伝 牧谿の『竹雀図』に目を向けましょう。写真では見えにくいかもしれませんが、画面右上と左下には、それぞれ小さな印が捺されています。実はこれらは画家の印ではなく、かつてこの作品を手にした人々にまつわるものです。左下の「善阿」印は足利義満ゆかりの善阿弥、右上の「雑華室印」は足利義教の書斎を示しています。
こうした痕跡をたどることで、この作品が室町幕府の将軍家に長く伝来してきたことが分かるのです。
11人の禅僧が言葉を寄せた『江天遠意図』
重要文化財『江天遠意図』 伝 周文筆 大岳周崇ほか11僧賛 日本・室町時代 15世紀 ※5月30日(土)~6月21日(日)展示
賛(画賛)とは、絵の上部や余白に書き添えられた漢詩や和歌などのことです。画家自身が記したものは自画賛と呼ばれますが、絵を見た人が感想や賛辞を書き加えることも珍しくはありませんでした。
そのよい例が、たくさんの詩文が記された『江天遠意図』です。余白を埋めるように並ぶ漢詩は、絵の中に描かれた茅屋に心を寄せた禅僧たちが、それぞれの思いを詠んで書き添えたもの。絵と詩文を組み合わせた作品は「詩画軸」と呼ばれ、室町時代には送別や記念の品として親しまれました。
本作では11人の禅僧が、まるで寄せ書きのように賛を寄せています。なかには30人近い禅僧が言葉を書き連ねた詩画軸もあったといい、当時の交流の豊かさと、絵を介して言葉を送り合う文化の広がりを思わせます。
