サルコペニアの診断基準とセルフチェック

サルコペニアは、筋肉量、筋力、身体機能を組み合わせて評価します。病院での検査だけでなく、ふくらはぎの太さや立ち上がり、歩く速さなど、日常生活の変化も手がかりになります。
医療機関での診断基準
サルコペニアの診断は、アジア人の体格や特性を踏まえたAWGSの基準が用いられています。2025年に改定されたAWGS2025は、低筋力と低筋肉量の両方がある場合にサルコペニアと診断します。AWGS2019で診断項目に含まれていた歩行速度や椅子立ち上がりなどの身体機能は、AWGS2025では重症度や生活機能への影響をみる指標として扱われます。
評価項目 65歳以上 50〜64歳
握力低下
男性28Kg未満
女性18Kg未満
男性34Kg未満
女性20Kg未満
骨格筋量低下:DXA
男性7.0Kg/m2未満
女性5.4Kg/m2未満
男性7.2Kg/m2未満
女性5.5Kg/m2未満
骨格筋量低下:BIA
男性7.0Kg/m2未満
女性5.7Kg/m2未満
男性7.6Kg/m2未満
女性5.7Kg/m2未満
骨格筋量はDXAやBIAで評価し、握力は握力計で確認します。上記の基準で筋力低下と骨格筋量低下の両方がみられる場合、サルコペニアと診断します。
参照:『アジアでの新しいサルコペニアの診断基準AWGS2025』(日本カヘキシア・サルコペニア学会)
指輪っかテストによるセルフチェック
指輪っかテストは、特殊な機器を使わずにサルコペニアのリスクを確認できる方法です。両手の親指と人差し指で輪を作り、自分のふくらはぎの太い部分を囲みます。
ふくらはぎが指の輪より細く、輪とふくらはぎの間に隙間ができる場合は、サルコペニアのリスクがあるかを確認する目安になります。AWGS 2025でも、下腿周囲長が男性34cm未満、女性33cm未満の場合や、指輪っかテストで異常がある場合は、詳しい評価に進む目安とされています。
参照:『アジアでの新しいサルコペニアの診断基準AWGS2025』(日本カヘキシア・サルコペニア学会)
立ち上がりや歩行速度から気付くサイン
サルコペニアは、日常生活の動作の変化から気付くことがあります。横断歩道を青信号の間に渡りきれない、同年代の方と歩くと遅れるようになったといった変化は、歩行速度の低下を示すサインです。
また、手すりにつかまらないと階段の昇り降りが難しい、椅子や便座から立ち上がるときに手をつく、ペットボトルのふたが開けにくいといった変化は、下肢筋力や握力の低下と関係します。こうした変化が続く場合は、筋力低下のサインとしてとらえ、早めに状態を確認するとよいでしょう。
サルコペニア予防と改善|運動のポイント

サルコペニアの予防と改善には、運動療法が中心的な役割を持ちます。筋力トレーニング、有酸素運動、バランス運動を組み合わせ、無理なく続けられる形にすることが大切です。
下肢を中心にした筋力トレーニング
高齢の方は、太ももやふくらはぎなど、立つ・歩く・階段を上る動作に関わる筋肉が低下しやすくなります。そのため、スクワット、かかと上げ、椅子からの立ち上がり運動など、下肢の大きな筋肉を使う運動がすすめられます。運動に慣れていない場合は、椅子や手すりを使い、安全を確保しながら始めます。大切なのは、急に強い負荷をかけることではなく、継続できる強度で行うことです。
有酸素運動との組み合わせ方
筋力を保つには筋力トレーニングが有効ですが、歩く力や持久力を支えるには有酸素運動も組み合わせるとよいです。ウォーキング、水泳、自転車こぎなどは、心肺機能を保ち、長く動く力の維持につながります。
取り入れるときは、筋力トレーニングと有酸素運動を別々の日に行っても、同じ日に短く組み合わせても構いません。例えば、散歩の前後に椅子からの立ち上がり運動やかかと上げを行う、室内で筋力トレーニングをした後に軽く歩くといった方法があります。転倒予防を考える場合は、片脚立ちやストレッチなども加え、無理なく続けられる形にすることが大切です。
無理なく運動を続けるためのコツ
無理なく続けるには、低い負荷から始め、生活動作に近い運動を少しずつ取り入れることが大切です。サルコペニア対策の運動は、短期間だけ頑張るよりも、長く続けることで効果が出やすくなります。例えば、椅子からの立ち上がりを数回行う、屋内を歩く、洗面台につかまりながらかかと上げをするなど、日常生活に組み込みやすい運動から始めると続けやすくなります。痛みや強い息切れがある場合は無理をせず、心臓や血管の病気、変形性関節症、骨粗鬆症などがある方は、医師や理学療法士に相談しながら身体の状態に合った運動量を決めるとよいでしょう。

