ロコモティブシンドロームは、骨や関節、筋肉、神経などの運動器の働きが低下し、立つ、歩くといった移動機能が落ちている状態を指します。進行すると転倒や骨折につながりやすくなり、将来的に要支援・要介護状態となるリスクにも関わります。高齢の方だけの問題ではなく、運動不足や生活習慣、体重バランス、運動器の病気などによって、若い年代から少しずつ進むこともあります。
この記事ではロコモティブシンドロームの原因やチェック方法、予防のポイントを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドロームは、移動機能の低下に着目した考え方です。まずは、どのような状態を指すのか、なぜ注目されているのかフレイルやサルコペニアとの違いを解説します。
ロコモティブシンドロームの定義
ロコモティブシンドロームは、骨や関節、筋肉、神経などの運動器の障害によって、立つ、歩くといった移動機能が低下した状態です。略してロコモとも呼ばれます。
移動能力を表すlocomotiveから作られた言葉です。ロコモは、ひとつの病名ではありません。移動機能の低下が始まった段階から、進行して日常生活や社会参加に支障が出る段階までを含む概念です。さらに進むと、要支援・要介護状態につながる可能性があります。
ロコモが注目されている背景
日本は高齢化が進み、平均寿命だけでなく、健康寿命をどのように延ばすかが大きな課題になっています。
介護が必要になる原因には認知症や脳血管疾患などがありますが、関節疾患、骨折・転倒、脊髄損傷などの運動器に関わる問題も大きな割合を占めます。
長く生きることに加えて、自分で立ち、歩き、生活を続ける力を保つことが求められているため、ロコモへの関心が高まっています。
フレイルやサルコペニアとの関係
ロコモ、フレイル、サルコペニアはいずれも高齢期の生活機能低下に関わりますが、それぞれ意味が少しずつ異なります。
ロコモは、骨や関節、筋肉、神経などの運動器による移動機能の低下に注目します。サルコペニアは、筋肉量の減少に加えて筋力や身体機能が低下した状態を指します。フレイルは、加齢に伴って心身の予備能力が低下し、病気や転倒などをきっかけに生活機能が低下しやすくなった状態です。
これらは別々に起こるものではなく、互いに関係しながら進むことがあります。例えば、筋肉量や筋力が落ちると歩く力が低下し、ロコモにつながります。ロコモによって外出や活動量が減ると、さらに筋力が落ち、フレイルへ進みやすくなります。
ロコモティブシンドロームの主な原因

ロコモの背景には、加齢だけでなく、運動不足、喫煙、食習慣、体重バランス、運動器の病気などが関わります。複数の要因が重なって、少しずつ移動機能が低下します。
加齢や生活習慣による身体機能の低下
ロコモの要因のひとつは、加齢による身体機能の低下です。筋肉量は20歳代をピークに少しずつ減り、年齢を重ねるにつれて筋力も落ちやすくなります。筋力が低下すると、立ち上がる、階段を上る、長く歩くといった動作が負担になり、活動量がさらに減るという悪循環が起こります。
生活習慣もロコモに関わります。運動習慣がない方は、習慣的に身体を動かしている方に比べてロコモと判定されるリスクが高くなります。また、喫煙、不規則な食事、朝食を抜く習慣、高血圧などの生活習慣病も、運動器の健康に影響します。
体重バランスの影響
体重のバランスも、ロコモの進行に関わります。肥満があると、膝や股関節などの荷重関節に負担がかかりやすくなります。その結果、変形性膝関節症や変形性股関節症が進み、歩行時や階段の昇り降りで痛みが出やすくなります。痛みを避けて動かなくなると、筋力がさらに低下し、移動機能の低下につながります。
一方で、痩せすぎや低栄養も影響します。高齢期には食事量が減りやすく、たんぱく質やカルシウムなどが不足すると、筋肉量の減少や骨密度の低下を招きます。サルコペニアや骨粗鬆症が進むと、転倒や骨折のリスクも高まります。
ロコモにつながりやすい運動器疾患
ロコモの原因となる運動器疾患には、変形性膝関節症、変形性股関節症、腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症などがあります。
変形性膝関節症は、関節の軟骨がすり減り、歩行時や階段昇降時に痛みが出ます。変形性股関節症は、脚の付け根やお尻に痛みが出たり、歩き方が不安定になったりします。
腰部脊柱管狭窄症は、背骨の神経の通り道が狭くなり、歩くと脚の痛みやしびれが出て、休むと楽になる間欠跛行がみられます。
骨粗鬆症は、軽い転倒や動作でも背骨や脚の付け根を骨折することがあります。
また、がんの骨転移やがん治療中の安静による筋力低下、ホルモン療法に伴う骨量低下も、移動機能を下げる原因です。

