人生会議の進め方

人生会議は、思い立ったときに一度話し合って完結するものではありません。ステップを踏んで進めていく継続的なプロセスです。ここでは、人生会議の始め方や参加すべき人物、記録の残し方を解説します。
話し合いを始めるタイミング
人生会議を始めるには、日常会話の延長として健康なときから話し合いの種をまいておくのが理想です。
具体的なきっかけとして以下が挙げられます。
毎年の健康診断やがん検診を受けたとき
同年代の友人や親戚が病気になったとき
テレビ番組やニュースで医療や介護の話題が出たとき
また、医学的なきっかけも重要です。
がんや難病など、特定の病気の診断を受けたとき
要介護認定を受けて生活環境が変わるとき
慢性疾患が進行して日常生活動作(ADL)が低下してきたとき
これらはあらためて本人の価値観を見つめ直し、話し合いを持つべきタイミングと考えられます。
参加する人と役割
人生会議の主体であり中心となるのは本人ですが、本人を支える家族や信頼できる方、医療ケアチームの三者が参加するのが基本です。
家族のなかからは、あらかじめ代理意思決定者を明確に定めておくことが推奨されています。代理意思決定者とは、本人が将来意思を伝えられなくなった際に、代わりに医療者と話し合い、本人の意思を推定して決定を下す役割を担う方のことです。
医師、看護師、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカーなどの専門職は、話し合いを専門的、客観的な視点からサポートする役目を持ちます。
話し合った内容の記録方法
話し合った内容は、文字として記録に残すことが推奨されています。人間の記憶は曖昧になりやすく、いざというときに親族間で認識のズレやトラブルが生じるのを防ぐためです。
記録媒体に法的な指定はありません。市販のエンディングノートや、各市町村や地域の医師会がホームページなどで配布しているフォーマットを利用すると、要点を漏れなく整理できます。
いざというときに参照できるように、記録した内容は本人が大切に保管するだけでなく、控えを関係者全員で共有しましょう。
人生会議を進めるときの工夫

死や重い病気に関する話題は、本人にとっても家族にとっても心理的な抵抗や恐怖感が伴い、スムーズに進まないことがあります。話し合いを円滑に進めるためのコミュニケーションの工夫や、注意すべきポイントを解説します。
切り出しにくいときの対応のポイント
家族の方から突然「もし意識がなくなったら延命治療はどうする?」などと尋ねると、本人は「自分は見放されたのか」「もうすぐ死ぬと思われているのか」と不信感や不安を抱いてしまう可能性があります。
話を切り出しにくい場合は、「もしものときのために、今からどうしたいか希望を知っておきたい」「私自身も自分のエンディングノートを書いてみたから、一緒に話してみない?」と、共感をベースにした声かけから始めてみましょう。
また、過去に経験した親族や友人の看取りの経験を振り返って「あのお葬式や療養の様子を見てどう思った?」などの身近なエピソードから話題を広げていくのもいい方法です。自然な会話から価値観が共有しやすくなります。
本人の意思が変わったときの対応
人生会議では、意思は変化するものであり、何度でも話し直してよいという前提が重要です。健康なときと実際に病気になったときでは、希望が変わることもあります。
例えば「胃ろうは絶対に嫌だ」と考えていた方でも、実際に病気になって家族の献身的な介護を受けたり、新たな生きがいを見つけたりして「やっぱり胃ろうを造ってでも生きたい」と考えが変わることがあるでしょう。
本人の心身の状態の変化、家族構成の変化、気持ちの揺らぎに合わせて、都度話し合いを重ねましょう。
医療職や介護職に相談すべき場面
家族だけで話し合うのが難しい場合や、医学的な判断基準がわからずに話し合いが行き詰まった場合は、医療や介護などの専門職に相談しましょう。専門的な知見をもとに客観的な情報を提供できます。
また、ご本人の希望とご家族の希望が対立してしまった場合や、親族間で意見がまとまらない場合も相談するといいでしょう。専門職が第三者として介入すると、合意形成に向けた調整役になれるためです。

