成年後見人の役割とできること

成年後見人に選任された場合、本人のためにどのようなことができるのでしょうか。具体的な役割と権限を解説します。
財産管理としての役割
財産管理としての主な役割は、本人の預貯金や不動産のような財産を、損害を与えない安全な方法で管理することです。本人の財産に関する法律行為について代理権や取消権を行使し、本人に代わってさまざまな手続きを行います。
後見人に就任したら、1ヶ月以内に本人の財産状況を調査し、財産目録を作成して家庭裁判所に提出する義務があります。日々の業務として、本人の収入と支出に関して正確に金銭出納帳を付け、領収書等の資料を適切に保管しなければなりません。
本人の財産から支出できるものは、基本的に本人の生活費や療養看護に関する費用です。また、本人が扶養していた配偶者や未成年者の生活費、後見事務に必要な費用も本人の財産から支出可能です。重要な手続きを行う際は、家庭裁判所での手続きが必要です。
財産管理を行ううえで、後見制度支援信託という仕組みを利用できます。通常使用しない金銭を信託銀行等に信託し、日常的な支払いに必要な金銭のみを後見人が管理する方法です。信託した財産から施設入居費や医療費などのまとまった金銭を引き出すには、あらかじめ家庭裁判所の許可が必要です。後見人による財産の使い込みなどのトラブルを未然に防ぎ、本人の大切な財産を適切に管理し保護するために活用されます。
参照:『後見制度において利用する信託の概要』(家庭裁判所)
身上監護としての役割
身上監護とは、本人の生活や健康を維持するために、生活環境や療養環境を整える役割のことです。成年後見人は、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人が適切な支援を受けられるように業務を行います。具体的には、介護サービスの利用契約や施設への入所契約、医療契約等について、本人に代わって代理権を行使します。
療養看護や生活のサポートは、数年から十数年の長期間に渡ることも少なくありません。将来の生活の変化も見据えながら、本人の財産から生活に必要な費用を計画的に支出し、そのときに応じて最善の療養看護の環境を維持できるように計画するのも大切な役目です。
成年後見人ができないこと
成年後見人は、あくまでも法律行為を支援する制度です。以下のようなことはできません。
本人名義の財産を後見人個人の名義に変更する
本人の財産から勝手に報酬を差し引く
医療行為そのものにの同意する
日用品の購入など、日常生活に関する行為の取り消し
家事や介護などの事実行為
生活のサポートが必要な場合は福祉サービスと契約する、病院への入院手続きをする、などの契約面に関する決定を行います。
成年後見制度を利用するまでの流れ

成年後見制度を利用するまではどのような流れをたどるのか、申立てから後見開始までを解説します。
家庭裁判所への申立て
申立は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、市町村長、検察官などです。一度家庭裁判所に申立てを行うと、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることはできません。
審理と後見人の選任
家庭裁判所の調査官や書記官が、提出資料をもとに申立人から事情を聴取します。本人の判断能力を明確にするため、医師による鑑定が行われることもあります。その後、裁判官が調査結果や鑑定結果に基づいて後見人を決定します。このとき、申立人が推薦した候補者が必ず選ばれるとは限りません。場合によっては、弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者専門家が選任されることがあります。
後見開始後の手続きと業務
後見人が決定したら、業務が開始されます。後見の開始や後見人の権限などの情報は法務局で登記され、必要に応じて権限を証明できるようになります。後見人は家庭裁判所の監督のもとで業務を行い、家庭裁判所から求められたときにすぐ報告できるような準備が必要です。また、本人の住所変更や死亡時などにも速やかな報告が求められます。
本人の財産を不正に流用するなど不適切な事務を行うと、後見人を解任されたり損害賠償を求められたりするだけでなく、業務上横領などの刑事責任を問われることもあります。厳格な業務が求められる役割です。

