●「学校に行ったら終わりだ」2日後の自殺未遂
指導後、元生徒は強い恐怖と絶望感に襲われた。
「学校に行ったら終わりだ」「もう生きていけない」。そう考えるようになり、帰宅後も自室で一人落ち込んだ。
「考えているうちに『自分はダメ人間なんだ』と思い込むようになりました」
翌10月29日、ショックから学校を欠席した。
「翌日も『死ねば楽になるんじゃないか』と思っていました。母親と昼に買い物に行った際にも、『もう生きていけない』と追い詰められていました。そのため、母親に気づかれないよう、『買い忘れがある』と嘘をつき、自殺のための道具を準備しました」
元生徒は10月30日未明、自宅で自殺を図った。飼い犬が異変を察して騒いだことで家族が気づき、父親が発見。一命を取り留めた。
「父親に助けられたことは覚えています。迷惑をかけてしまったなと後悔していました」
その後、元生徒は入院。心因反応やうつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。現在も不安状態や焦燥感、解離性健忘、フラッシュバック、睡眠障害などの症状に苦しんでいる。
また、自殺未遂によって負った両臀部の重度熱傷(Ⅲ度)について、日本スポーツ振興センターから後遺障害併合11級の認定を受けている。
●本人への聞き取りなし「必要性はない」の回答
元生徒が提訴を決断した最大の理由は、事故後の県教育委員会の対応だった。学校側は報告書で指導を「不適切」と認めた。
また、学年主任については、それ以前から厳しい指導をめぐって保護者から苦情が寄せられていたことも記載されている。
しかし、学年主任への聞き取り内容として、元生徒が「反抗的な態度」を取っていたとの記述もあった。
「絶対に反抗した覚えはない。もう怯えていただけです。震えながら。その記述には納得がいきません」
元生徒によると、この報告書が作成される過程で、本人への直接の聞き取りは実施されていないという。学校や県教育委員会は、事故から5年が経過した現在も、聞き取りの必要性はないとの立場を示しているという。

