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1日2万歩歩けますか? “運動習慣なし”を変える『処方箋』と、個人データ活用による『備えの医療』

1日2万歩歩けますか? “運動習慣なし”を変える『処方箋』と、個人データ活用による『備えの医療』

「運動処方箋」による医療的アプローチ

宮脇氏:
このような知見を踏まえ、私が実践している方法が「運動処方箋」です。当診療所の近隣には連携ジムがあり、運動処方箋で患者さんに具体的な運動内容を処方します。患者さんの運動記録はカルテに反映されるため、診察時に医師が評価しフィードバックを行います。「今週はしっかり運動できていましたね」と医師に声をかけられるだけで、継続率は大きく変わると感じています。
また、厚生労働省認定の運動療法施設では、条件を満たせば医療費控除の対象になることもまだ十分に知られていません。運動習慣がない人に対しては、根性論ではなく、楽しさ・記録・承認を組み合わせることが必要です。そのような観点で、大阪・関西万博は運動の可能性を示してくれました。

「眠ったままの個人データ」が予防医療の未来を拓く?

堀江氏:
大阪・関西万博を見ていると、運動も医療も、正しさより設計が大事だと改めて感じます。特に医療データの扱いは象徴的です。「病院で取ったデータは病院のもの」という扱いが一般的ですが、本来は個人のものですよね。万博で人が自然に2万歩歩いたのと同じで、医療データも「使いたくなる形」に設計しない限り、社会には広がらないと思います。

山田氏:
現状、医療データは医療機関ごとに分断されています。フォーマットは決まった形に統一されている部分も多いものの、同意のもとで自由に個人のデータを活用する仕組みが十分に整っていません。その結果、予防に生かせるはずのデータが眠ったままになっています。

田中氏:
大阪府では、スーパーシティ型国家戦略特区としての取り組みを進めています。大阪・関西万博のレガシーとして、Web3(データをユーザー個人で管理する分散型のインターネット)でPHRを活用し、健康や命に関するデータを個人が主体的に管理できる社会の実現を目指しています。

宮脇氏:
医師の立場から見ると、PHRの意義は非常に大きいと思います。これまでは「最近どうですか?」という曖昧な問診に頼らざるを得ませんでしたが、日々の運動量や睡眠、血圧といった記録があれば、より具体的で現実的な予防のアドバイスができます。このほか、記録に報酬や楽しさを組み合わせることも有効で、運動が苦手な人ほど効果を発揮します。

堀江氏:
例えば、運動量に応じて何らかのメリットが返ってくる仕組みや、歩数量に応じてゲームが進行したり、新しいアイテムをゲットしたりできるような設計のスマホゲームは効果的だろうと感じます。僕自身は、25年分の人間ドックや画像データを一つのアプリで管理しており、医師がそのデータを見てコメントしてくれます。このような使い方が社会的に当たり前になれば、医療との距離感はかなり変わるはずです。

山田氏:
PHRが普及しない理由の一つは、「データは病院のもの」という慣習です。マイナ保険証の活用はその前提を変える大きな転機になるでしょう。個人が自分のデータを持ち、活用する流れを作ることが重要です。

田中氏:
大阪府では今日ご一緒している大阪大学の山田先生や宮脇先生などと連携し、PHRを本人に返却し、本人の意思で活用できるWEB3PHR基盤を早急に構築していきたいと考えています。大阪が指定を受けているスーパーシティ型国家戦略特区制度を最大限に活用しながら、社会実装に向けて、絶賛実証中です。

宮脇氏:
さらにWeb3の考え方を取り入れれば、「データは個人のもの」という前提を技術的に担保できますね。自分の健康行動が評価されるようになれば、予防に取り組む動機付けにもつながります。将来的には、企業がPHRを活用する際に本人の許諾を得て、その対価を支払う仕組みも考えられます。

堀江氏:
今の社会は、いずれ要介護状態になる前提で設計されているように感じます。しかし、本来は運動を続けることで要介護状態そのものを減らせるはずです。

田中氏:
そのためには、生活習慣病リスクが高まるとされる40~50代の方々が、一日のうちの大半を過ごす職場で運動時間を確保しやすくするなど、無理なく働きながら健康づくりをすることができる環境を、特区も活用しながら進めています。

堀江氏:
国民全体のビッグデータを匿名化して解析できれば、病気の前段階やリスクが見えてくるでしょう。医療は治すものから備えるものに変わっていくと思います。

山田氏:
仕組み自体が社会に根づけば、教育や職場、地域での健康づくりの在り方も変わっていくはずです。PHRと医療データが連携し、個人の時系列データが蓄積されれば、個別化医療を行えるようになります。予防医療の質は確実に高まるのではないかと期待しています。

配信元: Medical DOC

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