重症筋無力症は、身体を動かそうとする神経の信号が、筋肉へ正確に伝達されなくなる病気です。この病気は厚生労働省によって指定難病11に定められています。かつては命に関わる重篤な病気とされていましたが、早期発見のための検査技術や適切な治療法が大きく進歩した現代では、多くの方が健常な方と変わらない生活を送れるようになっています。本記事では、重症筋無力症の具体的な症状や診断の仕組み、治療法、そして日常生活を送るうえでの注意点などを解説します。

監修医師:
高宮 新之介(信州大学医学部附属病院 呼吸器外科)
昭和大学(現・昭和医科大学)卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、日本外科学会専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事する中、医学博士を取得。昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)呼吸器センターを経て、現在は信州大学医学部附属病院 呼吸器外科に勤務。肺がんを中心とした呼吸器外科診療、低侵襲手術、肺がん術後QOL、術前心理状態と術後疼痛に関する研究に取り組む。日本外科学会専門医、日本呼吸器外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。
重症筋無力症でみられる主な症状

主な症状は以下のようなものがあります。
まぶたが下がる
まぶたを持ち上げる筋肉が疲労し、夕方になるにつれてまぶたが重く垂れ下がってくるのが大きな特徴です。
ものが二重に見える
眼球を動かす外眼筋の力が低下して起こるため、片目を手で隠すとものが一つに見えるのが特徴です。
手足の筋力が低下する
腕を上げ続ける動作や階段をのぼる動作など、日々の基本的な動きが大変つらくなります。
うまく表情を作れない
表情を作るための筋肉が低下するため、自然な笑顔が作れなくなったり、お口をうまく閉じられなくなったりします。
話しにくさ、飲み込みにくさを感じる
鼻声になったり、食べ物を飲み込みにくくなったりして、誤嚥のリスクも高まります。
疲れやすい
反復して筋肉を使うと急激に力が入りにくくなり、休息をとると回復するという特有の症状です。重症筋無力症のすべての症状の根底にある要因が、易疲労性と呼ばれる疲れやすさです。健康な方であれば問題なくこなせる動作であっても、同じ動作を何度も反復して筋肉を使用することで、急速に筋力が低下してしまいます。
進行した重症筋無力症でみられる症状

重症筋無力症は、発症の初期には目の症状のみが現れる眼筋型であっても、患者さんの半数以上が2年以内に全身の症状を伴う全身型へと進行するとされています。全身型へ進行すると、先述した手足の脱力や、話しにくさ、飲み込みにくさといった症状がより顕著になり、日常生活の維持が難しくなってきます。
さらに病状が進行し、極めて重篤な状態に陥ると、肺を膨らませたり縮めたりするための呼吸筋まで麻痺してしまいます。自力で呼吸をすることが困難になり、深刻な息苦しさや低酸素状態を引き起こすこの状態をクリーゼと呼びます。クリーゼは重症筋無力症において大変警戒すべき事態であり、速やかに集中治療室での人工呼吸器管理や特殊な血液浄化療法を行う救命処置が必要です。

