環境活動家から飛び出した「弁明の余地のない二酸化炭素排出」というデータ
一方で、この規格外の「弾丸ツアー」は欧米で大きな波紋を呼んでいる。会長が短期間でこれだけの距離を移動できるのは、プライベートジェットを日常的に利用しているためだ。調査報道機関「ジョシマール」によれば、同氏は過去3年間ですでに約37万マイルを飛行した実績があるという。
今大会の移動規模について、カーボンフットプリント評価を専門とする仏企業「グリーンリー」は、「この飛行機にわずか1時間搭乗するだけで、平均的な人間が丸1年で排出する量とほぼ同等の二酸化炭素を排出することになる」と指摘。このままのペースで観戦を続けた場合、大会期間中だけでフランス人約35〜55人の年間排出量に匹敵する「300〜500トンという、弁明の余地のない範囲の二酸化炭素」を排出すると試算した。
環境保護団体グリーンピース米国支部のジョン・ホセバー氏は、「幹部たちが環境汚染の激しいプライベートジェットで毎日飛行することは、FIFAが気候変動の原因を認識しているというメッセージにも、解決策の一部になるという責任を感じているというメッセージにも全くなっていない」と辛辣に批判している。
FIFA側はこうした批判に対し、幹部の移動手段は「何が最も効率的で費用対効果が高いか」を基準に民間機かプライベートジェットかを選択していると擁護している。しかし、FIFA自身がサステナビリティ戦略で「責任ある消費の促進」を掲げていることとの矛盾は拭いきれず、議論は過熱する一方だ。
迫る「同時刻キックオフ」。会長はどの試合を選ぶのか?
大会は今後、グループステージ(1次リーグ)の最終戦である第3戦へと突入していく。ここでさらなる関心を集めるのが、インファンティーノ会長の「観戦スケジュール」である。
グループステージの最終戦は、過去の大会同様、談合や八百長などの不正を防ぐための公平性の観点から「同組の2試合が完全に同時刻でキックオフ」される。つまり、これまではプライベートジェットの強行軍で1日に複数都市をハシゴできた会長も、最終戦ばかりは物理的に「どちらか1つの試合」しか選ぶことができない究極のジレンマに直面する。
圧倒的なスター選手がそろう強豪国のビッグマッチを選ぶのか。それとも、大会の盛り上がりを左右する開催国の命運を懸けた一戦に駆けつけるのか。あるいは、これまでに足を運べていない小国の歴史的勝利を見届けるためにスタジアムへ向かうのか——。
ピッチ上で繰り広げられる決勝トーナメント進出を懸けた激しいサバイバルとともに、「インファンティーノ会長がどの試合を観戦に選ぶのか」という彼自身の究極の選択にも、世界中の熱い視線が注がれそうだ。

