「疲れやすくなった」「体重が増えてきた」「なんとなく気力がわかない」といった不安を感じている方は少なくないのではないでしょうか。甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)は、甲状腺ホルモンの分泌が不足することで全身の代謝が低下する病気で、原因の多くは橋本病(はしもとびょう)と呼ばれる慢性的な甲状腺の炎症で、成人女性の約10人に1人にみられます。ただし橋本病と診断された方すべてが治療対象になるわけではなく、実際に甲状腺ホルモン値が低下して投薬が必要になるのは、橋本病患者の2〜3割程度とされています。
多くの場合、毎日の服薬が長期にわたって必要になるため、月々どれくらいの費用がかかるのかを早めに知っておくことは、治療を続けていくうえでも、家計管理のうえでもとても重要です。この記事では、通院費・薬代の月額目安から、費用を抑える方法、知っておきたい公的制度まで解説します。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
診断直後〜投薬調整期の費用(初期3〜6ヶ月)
甲状腺機能低下症と診断された直後は、適切な薬の量を見極めるための「投薬調整期」が続きます。1〜2ヶ月ごとに血液検査でTSH(甲状腺刺激ホルモン)とFT4(フリーサイロキシン)の値を確認し、チラーヂンS(レボチロキシンナトリウム製剤)の量を少しずつ調整します。TSHとは脳下垂体から出るホルモンで、この値が高いほど甲状腺機能が低下していることを示します。
投薬調整期は月1〜2回のペースで受診します。3割負担の方の場合、1回あたりの費用の目安は以下のとおりです。
■ 初診料・主な内容:-
・目安金額(3割負担):約900円
■ 再診料
・主な内容:外来管理加算を含む
・目安金額(3割負担):約400円
■ 診察料・検査料
・主な内容:生化学検査・TSH・FT4・エコー検査など
・目安金額(3割負担):約2,000〜4,000円
■ 処方箋料
・主な内容:院外処方(処方箋を薬局に持参する場合)
・目安金額(3割負担):約200円
■ 薬局費用
・主な内容:チラーヂンS(30日分)+調剤料・薬学管理料
・目安金額(3割負担):約600〜1,100円
■ 合計(目安)
・主な内容:-
・目安金額(3割負担):約3,000〜6,500円
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
検査項目が増えたり超音波(エコー)検査が加わったりすると費用は上がり、初診時は約4,000〜6,500円程度になることもあります。チラーヂンSは薬価(やっか)が非常に安価な薬ですが、調剤基本料や薬学管理料が加わるため、薬局での窓口支払いは月600〜1,100円程度が目安です。
安定期(維持期)の受診一回あたりの費用
甲状腺ホルモン値が正常範囲に安定した「安定期(維持期)」に入ると、通院頻度は2〜3ヶ月に1回程度に減るケースが多くなります。毎月の医療費の負担も軽くなりますが、チラーヂンSの服薬と定期的な血液検査は引き続き必要です。
体重の変化・妊娠・他の薬との相互作用で必要な量が変わることがあるため、自己判断で服薬をやめたり量を変えたりしないことが大切です。安定期の受診一回あたりの費用の目安は以下のとおりです。
■ 再診料・主な内容:外来管理加算を含む
・目安金額(3割負担):約400円
■ 診察料・検査料
・主な内容:TSH・FT4血液検査(2〜3ヶ月に1回)
・目安金額(3割負担):約1,200〜2,500円
■ 薬局費用
・主な内容:チラーヂンS(30〜90日分)+調剤料等
・目安金額(3割負担):約600〜1,100円
■ 合計(目安)
・主な内容:-
・目安金額(3割負担):約2,000〜4,000円
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
受診一回あたり2,000〜4,000円程度が目安で、糖尿病や高血圧などほかの慢性疾患と比べると比較的安価に抑えやすい疾患です。ただし長期間にわたるため、年間では約10,000円〜24,000円程度の支出になる点は念頭に置いておきましょう。

