●視聴者は「この人になら叱られたい」と思える人を求めている
私は、テレビで最も強い存在感を放つのは、視聴者が「この人になら叱られても納得できる」と思える人だと思っている。
誰しも人生に迷いがあり、自分の生き方に不安がある。先の見えない時代だからこそ、爽快に「喝」を入れてくれるような言葉を求める人は少なくない。
ただし、誰に叱られてもいいわけではない。「偉い人」だからでも、「賢い人」だからでもない。むしろ「成功者」に叱られても腹が立つだけだ。
心から「この人になら叱られてもいい」と思えるだけの人生を歩んできた人でなければ、その言葉は響かない。
●苦難を越えた人だけが持つ「優しさ」
その点、美輪さんは、まさに数多くの苦難を乗り越えてきた。
長崎で被爆を経験し、性的少数者として偏見や差別とも向き合ってきた。「ヨイトマケの唄」では、貧しい労働者に寄り添う歌を歌った。
そうした人生経験は、説明されなくても画面を通して視聴者に伝わっていた。
誰よりも人の弱さを知り、それを乗り越えてきた人だからこそ、「この人になら叱られたい」と思える。そして、修羅場をくぐってきた人ほど、人を受け入れる優しさも持っている。
さまざまな人生を受け止める包容力。それがあったからこそ、美輪さんの番組は幅広い世代に愛された。
他人の弱さを知る人は、テレビに向いている。マツコ・デラックスさんをはじめ、個性的なタレントが活躍している背景にも、どこか共通するものがあるように思う。

