ヨハネス・フェルメール(に帰属)《聖プラクセディス》, Public domain, via Wikimedia Commons.
その場所とは、東京・上野にある国立西洋美術館。所蔵品を中心に展示する「常設展」では、フェルメール作とされる絵画《聖プラクセディス》がほとんどいつでも見られます。
しかし、《聖プラクセディス》には長年"ある疑惑"がつきまとってきました。それが、「本当にフェルメールが描いたのか?」というニセモノ疑惑。もしも偽物だったら、「日本でフェルメールが見られる! やったー!」と喜んでいる場合ではありません。
《聖プラクセディス》は本物か、偽物か? 絵画をめぐるミステリーを深掘りしていきましょう。
《聖プラクセディス》ってどんな絵画?
ヨハネス・フェルメール(に帰属)《聖プラクセディス》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
《聖プラクセディス》を見たとき、「フェルメールっぽくなくない?」と感じた方もいるのでは。確かに、フェルメールの代表作《真珠の耳飾りの少女》や《牛乳を注ぐ女》とは作風が異なり、別人が描いたと聞いても驚かないかもしれません。
これこそが《聖プラクセディス》の特徴で、フェルメールには珍しい「宗教画」なんです。赤い衣服を着た女性は、カトリックの聖女プラクセディス。十字架を握りしめながら、壺に赤い液体を注いでいます。
ヨハネス・フェルメール(に帰属)《聖プラクセディス》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
この液体は、処刑されたキリスト教信者たちの血です。というと怖く感じられますが、流れた血をスポンジで集めて壺に保存する彼女の行為は、殉教者への敬意を表しています。
フェルメールは風俗画で特に有名ですが、画家になりたての頃は宗教画に取り組んでいました。本作がフェルメール作なら、キャリアの最初期に描いたものと考えられます。
本当にフェルメールが描いたのか?作者をめぐる疑惑とは
ここで、もう1枚の別の絵画を見てみましょう。これまで見てきた《聖プラクセディス》との違いはわかりますか?
フェリーチェ・フィチェレッリ《聖プラクセディス》, Public domain, via Wikimedia Commons.
本作は、フェリーチェ・フィチェレッリというイタリアの画家による絵画です。フェルメール作とされる作品とそっくりで、違いは十字架を手に持っているかどうか、くらいしか見当たりません。
実は、国立西洋美術館にある《聖プラクセディス》は、フェルメールではなくフィチェレッリの作品だ、と考えられていました。
ですが、絵画をよく見るとフェルメールがよく使っていた「Meer」を含むサインがあるとのこと。「フェルメールがフィチェレッリにならった」と解釈する研究者がおり、「フェルメールがフィチェレッリの絵画を模写したのでは!?」という説が急浮上したのです。1969年のことでした。
