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北区小学校火災 「朝6時出勤」と「学校で私物洗濯」が映し出す「1人きりのリスク」

北区小学校火災 「朝6時出勤」と「学校で私物洗濯」が映し出す「1人きりのリスク」

東京都北区の区立滝野川第三小学校の4階で6月19日午前に起きた火災で、出火元とみられる音楽準備室に、音楽を担当する40代の女性教員が私物の電気ストーブとサーキュレーターを持ち込み、1階家庭科室の洗濯機で洗った自身の服を4階の準備室内で乾かしていたことが2日、分かった。記者会見した高草木政浩校長は「私物の保管や洗濯は適切ではない」と明らかにした。男子児童2人と女性教諭1人の計3人が骨折し、11人が病院に搬送されたこの火災にはさらに見落とせない事実がある。この教員は普段から午前6時ごろに学校に出勤していたという。

「なぜ朝6時に学校にいたのか」という疑問は、教員ではなくても決して関係ない話ではない。スプリンクラーのない公共施設の安全、「ただ働き」構造を生む労働法制の抜け穴、担当者1人が全業務を背負う「1人体制」のリスク。この火災が照らし出す問題は根深い。

スプリンクラー設置されず

警視庁によると、音楽準備室内で見つかった電気ストーブは繊維片が付着し、出火当時は通電状態だった。教員は警視庁の任意聴取に「準備室で洗濯物を乾かしていた。サーキュレーターを使っていた」と説明している。警視庁は失火の疑いで捜査を始めている。

当時は5年生24人が隣の音楽室で授業を受けていた。火災報知器が鳴り、男性教員が駆け付けて音楽準備室からの煙に気づき、児童らを屋外のひさし部分などへ避難させた。逃げ遅れた児童3人と教員1人を消防隊員がはしごなどで救出。4階を中心に約200平方メートルが焼け、約3時間後に消し止められた。

同席した北区の山田加奈子区長は、児童の避難を含む初動対応や施設管理体制を検証し、年度内をめどに結果を取りまとめると述べた。

この火災でもう一つ浮かび上がったのが、公共施設としての学校の防火設備の問題だ。音楽室・音楽準備室にスプリンクラーは設置されていなかった。避難訓練でも救助袋は実際には使われてきておらず、煙が充満した廊下から階段への経路も機能しなかった。

消防法施行令により、学校へのスプリンクラー設置義務は原則として建物の11階以上に適用される。多くの小・中学校はこの基準を下回るため、設置が義務付けられていない。しかし、児童約330人が日中を過ごす公共の場で、4階を中心に約200平方メートルが30分以上燃え続けた事実は重い。

学校だけなく、図書館・公民館・地域の集会施設など、日常的に利用する公共施設の防火設備がどのような水準にあるかは、市民が知っておいて損はないはずだ。

「なぜ朝6時から学校にいたのか」

私物の持ち込みと学校での洗濯が「適切ではない」ことは言うまでもない。しかし、この教員が通常から午前6時ごろに出勤していた事実は、教員の長時間労働が常態化する制度的な構造と切り離して論じにくい。

公立学校の教員には、教員給与特別措置法(給特法)が適用される。簡単に言えば、「先生には残業代を出さない代わりに、基本給を少しだけ上乗せする」というルールだ。この法律では、教員が無理やり残業させられるのは学校行事や災害対応など「4つの特別なケース」だけに限定されている。それ以外の授業準備・プリント作成・登校指導などは、「先生が子供たちのために、自分の意志で勝手にやったこと」として扱われ、いくら働いても勤務時間にカウントされない。

日中は授業や児童・生徒の対応に追われ、自分の仕事をする時間はない。さらに残業代も出ない。その結果、どうなるか。「誰もいない早朝に出勤して、集中して仕事を終わらせるしかない」という状況に追い込まれてしまうのだ。

日本教職員組合(日教組)が2025年9〜10月に実施した調査では、公立学校の教職員の3人に1人が勤務時間を実際より短く申告した経験があることが分かっている。土日を含む1週間の勤務時間は平均約59時間44分。1カ月換算では約79時間の残業となる計算だ。18年の調査開始以来初めて60時間を切ったものの、時間外月80時間の「過労死ライン」と呼ばれる危険な水準ギリギリで働いている教師が大勢いる。

文部科学省が22年度に実施した教員勤務実態調査でも、週50時間を超える割合は小学校で64.5%。週60時間超の割合も小学校で14.2%にのぼる。

「始業前の早朝を『唯一集中できる時間』として使うのは、この構造下で相応の合理性がある」との見方も出ている。

給特法が生む「見えない残業」の構造は、実は教員だけの問題ではない。企業の「みなし残業制度」(固定残業代制)や「裁量労働制」でも、働きすぎが隠されやすい。「業務が終わらないから早朝や深夜を使う」という実態は、現代の日本の職場に広く見られる。

配信元: iza!

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