インスリンの分泌が不足する原因

インスリンの作用不足をきたす疾患には、インスリンの分泌低下が主体の疾患、および、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が主体の疾患があります。
インスリンの作用不足のなかで、インスリン分泌が低下する原因には、次のような疾患が挙げられます。
膵β細胞が破壊・障害される疾患
1型糖尿病や、膵癌・膵臓の手術後などの膵臓にダメージがある疾患では、インスリンの分泌不足により、インスリン作用が減弱して高血糖をきたす場合があります。
遺伝的にインスリン分泌が障害される疾患
インスリンを作る設計図である遺伝子に障害がある場合や、遺伝子異常が原因で膵臓の細胞の機能が下がる場合、インスリンの分泌が低下する場合があります。
MODYというタイプの若年発症の糖尿病や、新生児糖尿病という生後早期から発症する糖尿病、ミトコンドリア糖尿病などが知られます。
2型糖尿病の中でも分泌低下が主体のもの
2型糖尿病は発症した時点で、膵β細胞の機能が半分以下になっていることが知られています。治療を怠ったり、治療していても高血糖傾向であったりすると、この残り少ないインスリン分泌能がさらに低下してしまい、1型糖尿病にかなり近い病態をきたすことがあります。
内分泌・代謝疾患に伴うもの
ヘモクロマトーシスという鉄が臓器に沈着する病気や、銅が沈着するWolfram症候群という病気などで膵臓の機能に障害がおきると、インスリン分泌が下がることがあります。
また、膵臓が線維化して元の機能を失う嚢胞性線維症関連糖尿病という病気でもインスリン分泌が障害されえます。
薬剤・治療に関連するもの
がんに罹患した際に使用される免疫チェックポイント阻害薬という薬の影響で内分泌系に異常がでて、1型糖尿病を発症することがあります。
また、同じく抗がん作用をもつ抗PD-1抗体などでも、急激にインスリン分泌が枯渇することがあります。
ステロイドを使用する場合も、血糖値が上昇してインスリン作用が相対的に不足することがあります。
インスリンの分泌が不足しやすい人の特徴

ここでは、先に挙げた分泌能が低下する病気以外で、インスリンの分泌が不足しやすい人の特徴を述べます。
血のつながった家族に2型糖尿病の方がいる人(2型糖尿病の家族歴あり)
2型糖尿病は遺伝的要因と環境要因とが複雑に関与して発症します。そして、家族内集積するという特徴があります。このため、血縁者に2型糖尿病の方がいる場合、罹患する可能性が上がることになります。
なお、血のつながった家族に1型糖尿病の方がいる場合について、誤解がないように併記します。特別な遺伝子異常が受け継がれていない限り、1型糖尿病は遺伝しません。
食べても意図せず痩せていってしまう方
インスリンが出ると、筋肉や脂肪を合成する方向に働きます。つまり、インスリンの分泌が相対的または絶対的に不足すると、傾向としては「痩せ」に向かいます。
皮肉なことに、太る能力があるということ自体は、インスリンがしっかり分泌されている証拠といえます。インスリンの分泌が低い方は、筋肉と脂肪が合成しにくいため、太ること自体が難しいです。
アジア人
インスリンの分泌能には人種差があります。アジア人は、欧米人をはじめとする白人よりも、膵臓からのインスリン分泌がもとから少ないことが知られています。
食後に低血糖傾向になる方
インスリンの分泌は、分泌自体が減ってくる前に、「インスリン分泌のピークが遅れる」という段階を通るパターンを示すことがあります。このインスリン分泌のピークと、食事による血糖上昇のピークがずれている時に、食後高血糖をきたす場合があります。このため、食後に低血糖が起こる方はインスリンの分泌量が徐々に減ってきている可能性があります。

