インスリンの分泌が不足するとどんな病気になりやすい?

インスリンの分泌が相対的または絶対的に不足すると、血糖値が高い状態が続き、糖尿病を発症します。
また前述のとおり、インスリン不足が強い場合や、インスリンの作用不足に極度の脱水が加わった場合には、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)や高浸透圧高血糖状態(HHS)といった、命に関わる状態を引き起こすこともあります。
ここでは、そうした急性の危険な状態ではなく、高血糖が慢性的に続くことで起こる「糖尿病合併症」について説明します。
糖尿病性神経障害
身体が慢性的に高血糖に晒され続けると、足の神経を栄養する細い血管が障害されます。神経を栄養する血流が途絶すると、足裏や足先から「しびれ」「チクチクした痛み」「紙一枚はさんだような感覚の鈍さ」などといった症状が生じます。神経が完全に機能を失うと、痛みやしびれとして現れていた症状がやがてなくなり無痛になります。
糖尿病性腎症
糖尿病を放置する、また、血糖値が高い状態が続くと、腎臓がじわじわとダメージを受け、腎機能障害が進んでしまいます。腎臓の移植や、機械に腎臓の代わりをさせる透析という方法はありますが、慢性的に失われた腎臓の機能を回復させる手立ては、現在の医療では存在しません。このため、糖尿病と診断されたら、この腎症の進みがなるべく遅くなるような治療をしましょう。
糖尿病網膜症
眼の奥の「網膜」という部分にも、細い血管が集中しています。網膜が障害されると、障害された部位によっては失明に至ります。糖尿病が原因で視力を完全に失った人の数は、失明の原因のうち第3位に上るとされています。
糖尿病と診断されたら必ず、最低でも年1回は眼科を受診しましょう。また、糖尿病では白内障や黄斑症など、網膜以外の部分に起こる病気も発症率が上がることが知られています。視力に異変を感じたら、早めに眼科を受診しましょう。
足壊疽
糖尿病性神経障害がすすむと、感覚の鈍さから足のケガに気が付かなくなり、重症化してしまうことがあります。また、「痛みを感じにくい」ことで、同じ部位が何度も傷ついて、足に深い潰瘍ができてしまう場合があります。
このような「糖尿病性足病変」に、感染が生じてしまうと重症化する場合もあり、足切断が必要になる場合があります。傷を見つけたら、早めに病院で処置を受けましょう。皮膚科か、フットケアができる内科が推奨されます。
脳卒中(脳出血・脳梗塞)
糖尿病で脳の血管が障害されると、脳出血や脳梗塞を起こしてしまう場合があります。
脳卒中が疑わしい場合は、内科・脳神経内科もしくは救急外来を受診しましょう。
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
糖尿病で動脈硬化が進むと、心臓を栄養する3本の血管のうち1つ以上が閉塞(心筋梗塞)または狭窄(狭心症)することがあります。
通常、心筋梗塞や狭心症では、強い痛みがある程度続くものです。しかし、糖尿病がある方ではその痛みが乏しいことが多いです。
「肩甲骨の間が凝っている」という症状で、心臓を栄養する動脈の3本ともが詰まりかけていたケースもあります。
糖尿病と診断されたら定期的な診察、治療をきちんと受けるかかりつけの病院を持つようにしましょう。そして、疑わしい症状があるときは、医師に早めに相談するようにしてください。
「インスリンの働き」についてよくある質問

ここまでインスリンの働きについて紹介しました。ここでは「インスリンの働き」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
インスリンの働きが悪くなるとどうなりますか?
上田 莉子(医師)
インスリンの作用が不足すると、糖尿病を発症します。また、糖尿病により高血糖が持続すると、糖尿病合併症を発症する可能性があります。
まとめ糖尿病と診断されたら症状がなくても定期的な受診と血糖管理を続けましょう
糖尿病と診断された場合は、初期は著しい症状がない場合が大半ではありますが、症状がない間も病院を定期的に受診するようにしてください。
糖尿病と診断されたら、症状がない、困っていない時から、しっかり定期的に病院受診をしましょう。食事運動療法、薬物療法などを通して血糖値の管理を行うことで、将来起こりうる困ったこと(合併症)を予防することが大切です。
「インスリン」と関連する病気
「インスリン」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内分泌代謝系の病気
糖尿病性ケトアシドーシス
高血糖高浸透圧状態
1型糖尿病2型糖尿病膵癌
ヘモクロマトーシス糖尿病網膜症糖尿病腎症
糖尿病性神経障害
糖尿病性足病変
脳卒中虚血性心疾患糖尿病は放置すると万病のもととなります。必ず継続的に病院を受診しましょう。
「インスリン」と関連する症状
「インスリン」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
口渇
多飲
多尿
意図しない痩せ
意識障害・意識変容
易疲労感
疑わしい症状があれば内科を受診しましょう。
参考文献
Metabolic Syndrome|NCBI
Stepwise Discovery of Insulin Effects on Amino Acid and Protein Metabolism|Nutrients
1型糖尿病|日本内分泌学会
2型糖尿病|日本内分泌学会
糖尿病診療ガイドライン2024 第20章|日本糖尿病学会
U.K. prospective diabetes study 16. Overview of 6 years’ therapy of type II diabetes: a progressive disease|Diabetes
β Cell Dysfunction Versus Insulin Resistance in the Pathogenesis of Type 2 Diabetes in East Asians|Curr Diab Rep
糖尿病網膜症|日本眼科学会
視覚身体障害者認定の実態疫学調査|厚生労働省
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