生成AIが医師を超える時代? 「DX推進」×「予防中心」で日本が目指す新たな“医療のカタチ”

生成AIが医師を超える時代? 「DX推進」×「予防中心」で日本が目指す新たな“医療のカタチ”

予防医療が広まらないワケ―社会に意識改革をもたらすためには?

堀江氏

当協会がこれまで予防医療の普及に取り組んできた中で感じるのは、「意識の高い人へのアプローチはある程度できてきている」ということです。問題は「そもそも健康のことをあまり考えたことがない人たちにどうやって届けるか」であり、最も大事なポイントだと思っています。いかがですか?

加藤先生

おっしゃる通りです。企業を経由した職域アプローチは一定の効果が見込める一方、そこからこぼれ落ちている人たちへの対応が課題となります。

堀江氏

企業の健康診断からこぼれ落ちる層、例えば個人事業主や主婦、引退後の人などへのアプローチは非常に重要です。実際に、健康診断を長年受けていなかった人が脳梗塞を発症し、後遺症が残ったケースもありました。社会全体の医療費という観点から見ても、先述した層への働きかけは急務だと思います。そのために、私はまず幼少期からの「教育」が重要だと考えています。義務教育はほぼ全ての日本人が通る道だからです。

加藤先生

AIの進化によって暗記中心の学習時間が減るのであれば、そのぶんを予防医療の知識教育に振り向けることができますね。保健体育をより実践的に充実させる方向性には非常に共感します。

堀江氏

北九州市で予防医療の祭典「YOBO万博」を開催した際にも、女性特有の疾患について学ぶデジタル教材を学校に導入しようという動きが生まれました。教師がすべて教えなくても、動画や教材の整備により学べる環境は作れます。月経や女性医療の知識不足による社会的な損失は大きく、こうした領域に対する正しい教育も、もっと早い段階から普及させるべきだと思います。

加藤先生

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の積極的勧奨再開に向けた活動でも、政治家や行政への継続的な働きかけが政策を動かすことを予防医療普及協会が示してきましたね。

堀江氏

予防医療の普及には、教育だけでなく政策的な後押しも欠かせません。また、予防医療を先行して実践しているのは歯科だと思っています。むし歯予防の考え方は社会にかなり浸透しましたし、今は歯周病予防や定期的なスケーリングが定着しています。こうした予防的な考え方は、医科にも広げられるはずです。

加藤先生

医科歯科連携はまだ十分とはいえませんが、歯科から糖尿病内科へ患者さんを紹介するような動きも少しずつ出てきています。そうした連携を広げながら、予防医療への意識が低い層にも届くゲーミフィケーション*やマーケティングと、初等教育での知識の底上げを両輪で進めていく必要がありますね。

*ゲームの設計要素や心理的アプローチを医療や教育などの非ゲーム分野に応用する手法

予防医療で運動は最重要! 継続のコツは「楽しい気持ち」「人とのつながり」

堀江氏

1次予防で最も大事なのは適度な運動だと思っています。多くの人が運動を習慣化できないのは、学校教育の中で「運動はつらいもの」という印象が刷り込まれているからではないでしょうか。

加藤先生

確かにそうですね。体育の授業は、運動が得意な子どもにとっては楽しい一方で、そうでない子どもにとっては苦手意識の原因にもなりやすいと思います。実際には、少し動くだけでも健康面で大きな意味があります。「激しい運動でなければ意味がない」という思い込みも問題です。

堀江氏

学校を卒業すると、多くの人が運動しなくなります。だからこそ、体育のあり方そのものを見直す必要があると思っています。また、習慣化のためには自分に合った運動や、楽しいと思える活動を見つけることが大切です。私はよく犬の散歩やゴルフを具体例に挙げます。どちらも運動になるだけでなく、自然に人とのつながりが生まれるきっかけになります。孤独は健康リスクにもつながりますから、“社会との接点”は非常に重要です。

加藤先生

おっしゃるとおり、運動は健康に良いだけでなく、人とのつながりが生まれることにも大きな価値を生みますね。

堀江氏

さらに高齢者においては、世代を超えた交流の場をどう作るかも重要です。高齢者同士だけの閉じたコミュニティではなく、若い世代とも自然に関われる環境を構築することが、予防医療の観点でも大きな意味を持つと思います。

加藤先生

私自身も、自分の親が私の子どもと接するようになってから元気になったと感じています。実際に、若い世代との接触が高齢世代に良い影響を与える可能性が示されている研究もあります。若い人と高齢者が自然に関われる場を、社会や政策の中でどう設計していくかが重要ですね。

堀江氏

そういう場が、まだ少ないと思います。

加藤先生

医療DXの面でも、ウェアラブルデバイスやAIを用いた健康状態の可視化は進んでいます。しかし、それだけでは不十分です。世代間交流のような社会設計とデータ活用が組み合わさってこそ、本当の「予防中心の医療」が2030年に向けて実現していくのだと感じます。

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。