老後の住宅用地として購入も…… 三重県で“雑木林”と化した、建築不可の分譲地「ニューハイツ白鳳台」 煽り広告や分譲後の造成工事協力など、驚きの実態の数々 <連載:限界ニュータウン探訪記 ねとらぼ版>

老後の住宅用地として購入も…… 三重県で“雑木林”と化した、建築不可の分譲地「ニューハイツ白鳳台」 煽り広告や分譲後の造成工事協力など、驚きの実態の数々 <連載:限界ニュータウン探訪記 ねとらぼ版>

怪しげな煽り広告、分譲後の造成工事協力依頼…… 譲り受けた奇妙な資料の数々

 そのあたりの経緯については、Aさんはあまり詳しく話さなかったが、結局その分譲地は、僕がいったん無償で引き取って処分することになったので、権利書と共に当時の販売図面や資料類なども一通り譲り受けて、僕が代わりに調べることになった。固定資産税も発生していないその山林について、すでに別の別荘地に住まいを確保したAさんは何の未練もなく、子どもに遺さずに済むのであれば無償でも全然かまわないとのことだった。

 資料の中身は、当時の売渡証書や販売区画図が主で、購入金額を示す売買契約書はなぜか残されていなかった。『脚光あびる「上野市ニュータウン」』なる見出しが躍る広告も含まれていて、その広告自体はAさんの所有する分譲地のものではなかったが、投機性を前面に打ち出した、いかにも怪しげなものである。結局実現していない「上野市南部都市開発基本構想」を根拠に「長期的な財産づくりにもぴったり」「将来性は抜群に有望」などと煽っている。なお、開発計画地として挙げられている「三重県上野市下神戸」は、今日においても大部分が山林であり、過去に大規模な開発が行われた形跡はない。

 資料の中には、Aさんが購入した「ニューハイツ白鳳台」を分譲した宅建業者からの直筆の手紙も何通か含まれていた。販売した分譲地の造成工事を行うにあたって、関係機関への許可申請が必要なので購入者へ協力を呼びかけるものだが、これはどう考えても奇妙なものだ。

 何らかの許認可が必要な地域において宅地造成・分譲を行う場合、普通は分譲前に申請や工事を済ませてから販売を行うものだと思うが、なぜすでに売却済みの分譲地にかかる許認可申請を、もはや分譲地の所有者でもない販売業者が改めて行う必要があったのだろうか。

 Aさんから譲り受けた分譲地の現地へ足を運んでみても、手紙に同封されていたと思われる計画図通りの造成工事が行われた形跡はなく、辛うじて側溝が雑木林の中に埋もれているのを確認できただけである。この辺りの事情については、Aさんも何も語っていなかったので真相は不明だが、推測するに分譲地の販売業者は、本来は分譲前に必要だった許認可申請を省略したまま分譲を行ってしまい、その後始末に追われていたのではないだろうか。

17年後の“線引き”も理解できず…… “売りっぱなし”が引き起こす購入者の不利益

 そして、もう一つ残されていたのが、Aさんが購入した「ニューハイツ白鳳台」を含めた一帯が、都市計画区域における「市街化調整区域」に指定された際の、旧上野市役所とやり取りした申請書類の控えであった。

 Aさんが「ニューハイツ白鳳台」の土地を購入した1977年の時点では、上野市においてはまだ「市街化区域」と「市街化調整区域」の区分けを定める区域指定(「線引き」という)は行われていなかった。ところが、野放図な乱開発が横行していた上野市は1992年に線引きを行い、Aさんの土地は原則として、建築物が建てられない「市街化調整区域」に指定されてしまったのだ。

 法規制が緩かった1970年代に分譲された土地が、その後「市街化調整区域」に指定されたり、あるいは「都市計画区域」に指定されたりして、建築基準法が定める接道義務が課されてしまって建築不可になってしまったケースは数限りなくある。もともと投機目的の土地分譲は、そうした規制の緩い小規模自治体で集中的に行われており、地域の開発計画を根本的に狂わす恐れのある乱開発を防ぐために、すでに販売が完了していた分譲地を巻きこむ形で、あとになって規制が加えられてしまったのである。

 もちろん、これは土地の価値に重要な影響を与える規制であるため、規制開始の時点ですでにその地域に住居があり、暮らしている住民に対しては、一定の緩和要件や救済措置がある。ところがAさんは、過去に上野市で暮らしたこともなければ、自分の土地に家を建てたこともない。Aさんに限らず、他の「ニューハイツ白鳳台」の土地の購入者も、誰一人として住居を建築していない。現在の「ニューハイツ白鳳台」はすべての区画が竹やぶに覆われ、事情を知らない人が現地を見ても、そこが分譲地であったことも分からないだろう。

 そのため「ニューハイツ白鳳台」においては、結局そうした特例措置もいっさい機能せず、現在は建築許可が下りない、ただの「山林」になってしまった。

 もっとも、「宅地」ではなく「山林」になったおかげで、評価額が安すぎて固定資産税が発生していなかったというメリットもあったが、建物が建てられない60坪足らずの「山林」など、まったく値段がつかないし、好き好んで扱う宅建業者もない。そのためAさんは、無用になった伊賀市の山林を、何とか子どもには相続させまいと思いつつも、どうやって手放せばよいのかもわからず、長年所有し続けていたのだ。

 Aさんは、自分の土地が「市街化調整区域」に指定された際、いちおう上野市側の指示に従って、いくつかの申請書類を提出している。しかし、その件についてAさんは何も語っていなかったし、残された申請書類を見ても、おそらくAさんは、自分が所有する土地にどんな規制が加えられたのか、正確に把握していなかったのではないかと思う。上野市における線引きの際にAさんが行った申請は、そもそも上野市内に住居を所有していないAさんには関係ないものであった。

 これは無理もない話で、上野市で線引きが行われたのは、Aさんが土地を購入してから17年後のことである。その間、別に他の区画の購入者との交流があったわけでもなく、当初「ニューハイツ白鳳台」を分譲した会社との付き合いもない。上野市からの通知はあったものの、不動産業とは無縁の職種についていたAさんには、その規制内容について詳細に検討できる機会がなかったのだ。

 おそらくAさんに限らず、自分が所有する土地について、新たに施行された法規制を正確に把握する機会もないまま所有し続けている人は相当いるのではないだろうか。投機型分譲地は、その大半が売ったらおしまい、売りっぱなしの商品であり、購入者へのアフターフォローを行ってきた会社など皆無である。

配信元: ねとらぼ

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