●無罪になっても長期間拘束される可能性も
そのため、本当に覚醒剤とは知らなかった場合でも、「回収措置原則」に加えて、薬物の量や隠し方、税関検査時の言動、渡航経路、渡航目的、渡航費用を誰が負担したかといった事情を総合的に判断され、「違法薬物だと認識していた」と推認される可能性は否定できません。
実際、「覚醒剤とは知らなかった」と主張して無罪判決が出たケースもあります。
しかし、最終的に無罪になったとしても、その間に逮捕・勾留・起訴され、長期間身柄を拘束される可能性があります。その負担は極めて大きいといえるでしょう。
海外から日本へ入国する際、安易に見知らぬ人の荷物を預かることは非常に危険です。
●日本から海外へ出国する場合は…死刑の可能性も
──日本から海外へ出国する際に荷物を預かって運んだ場合はどうでしょうか。
基本的な考え方は、日本へ密輸入する場合と同じです。
ただ、海外では覚醒剤などの違法薬物の密輸入に極めて重い刑罰を科す国もあります。中国などでは、死刑が適用される可能性もあります。
また、「覚醒剤とは知らなかった」と主張しても、その国の刑事法や刑事手続法のもとで、どこまで真摯に取り合ってくれるかはわかりません。
この点でも、リスクは極めて高いと言わざるを得ません。
空港で見知らぬ人から荷物を預かる行為は、違法薬物の密輸に加担したと疑われる危険があります。軽い気持ちの親切でも、取り返しのつかない結果を招きかねません。絶対にやめるべきです。
【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://aki-law.com/

