●「廃棄」「作成していない」──法務省の対応に残る疑問
外部の人間にとって、行政がどのような文書を保有しているのかを正確に把握することはできない。
そのため、情報公開請求では、入手したい文書の内容や特徴をできる限り具体的に記載し、行政側に該当文書の有無を確認してもらう。該当しそうなものがあれば、その文書名を教えてもらうことで、実際に請求するかどうかを決める。
少なくとも、筆者が日常的におこなっている手続きでは、そうした対応が一般的だ。
だが、今回の法務省の対応は、存在する可能性がある公文書についても、請求の趣旨が十分に考慮されないまま、「廃棄した」や「作成していない」と不開示になる運用がおこなわれているのではないかとの疑問を抱かせる。
そして、これは、まさに国会で議論されている再審制度の見直しとも無関係ではない。
●「再審の証拠開示」と「情報公開請求」、重なる構図
法改正の大きな論点の一つが、再審請求事件における「証拠の開示」だ。
これまでの再審事件では、弁護人の請求に対して検察が「該当する証拠はない」と説明した後、有罪認定を揺るがす証拠が見つかったケースや、被告人に有利な証拠が意図的に隠されたケースが指摘されている。
その結果、冤罪の被害者は長年苦しみ、無実を晴らせずに亡くなった人もいる。
そもそも弁護人には、検察がどのような証拠を保有しているのかを把握する手段が限られており、証拠開示そのものが大きなハードルとなっている。
情報公開請求に対する法務省刑事局の一連の対応を目の当たりにすると、「行政がどんな文書を持っているのかは行政しかわからない」という情報公開の構図と、「検察がどんな証拠を持っているのかは検察しかわからない」という再審事件の構図が重なって見える。

