●自治体への請求は国家賠償法だけではない
児童は、国家賠償法だけでなく、在学契約や信義則上の安全配慮義務違反を理由として、民法415条の債務不履行責任を追及できる可能性もあります(最高裁昭和50年2月25日判決、東京地裁八王子支部平成20年5月29日判決)。
失火責任法は不法行為に関する特別法であり、債務不履行責任には適用されません(最高裁昭和30年3月25日判決)。
そのため、自治体の履行補助者に当たる教員に「故意又は過失」(重過失に至らない軽過失を含む)が認められれば、自治体が損害賠償責任を負う余地があります(平野裕之「債務不履行責任の拡大と失火責任法」「伊藤進教授還暦記念論文集」編集委員会編『民法における「責任」の横断的考察 : 伊藤進教授還暦記念論文集』(第一法規、1997年)285頁)。
どの法律に基づいて請求するかによって、結論が変わる可能性がある点は、この問題の大きな特徴です。
●校舎が被害を受けた場合はどうなるのか
一方、被害者が校舎の所有者である自治体だと考える場合には、自治体は教員に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を検討することが一般的です。
ただし、不法行為では失火責任法が適用されるため、重過失がなければ教員は自治体に対する賠償責任を負いません。また、勤務関係上又は信義則上の注意義務違反を理由とした、債務不履行による損害賠償責任も理論上ありえます。この場合、先述したように失火責任法は適用されないと考えられています。
いずれの場合も、自治体が教員に請求できる範囲は、信義則により制限される可能性があります。

