衝撃的なドライブレコーダー映像がニュースで繰り返し放送された。
今年3月6日、まだ日が昇っていない午前4時ごろ。道路を走行していた車の前に、猛スピードで1台の車が割り込んだ。
進路をふさぐように停車すると、運転手は車を降りて被害者に怒鳴りつけた。さらに逃げようとした被害者の車にクロスレンチを投げつけ、フロントガラスはクモの巣状にひび割れた。
この事件で、器物損壊罪と傷害罪に問われた50代男性に対し、千葉地裁は7月9日、拘禁刑1年6カ月、執行猶予3年、クロスレンチ没収(求刑:拘禁刑1年6カ月)の有罪判決を言い渡した。
ドライブレコーダー映像には犯行の様子がはっきりと残されていた。被告人は起訴内容を認めた一方、「記憶がない」と主張していた。その背景を法廷で追った。(裁判ライター・普通)
●フロントガラスを破壊→顔や腕も殴った
初公判が開かれた6月30日、身柄を拘束されたまま入廷した被告人は、終始しかめた表情を浮かべていた。声は小さく早口で、法廷でも聞き取りづらかった。
起訴状によると、事件当日の午前4時ごろ、被告人はクロスレンチを被害者の車に投げつけ、フロントガラスを壊したとして器物損壊罪に問われている。修理費は36万円とされた。
さらに、運転席に乗っていた被害者の顔や腕をクロスレンチで複数回殴り、全治2週間のケガを負わせたとして、傷害罪でも起訴された。
被告人はいずれの起訴内容についても認めた。
●事件のきっかけは「煽り運転」の勘違い?
一時の激情だけでは説明しきれない執拗さもうかがわせる事件だった。検察官は冒頭陳述などで、事件に至る経緯を明らかにした。
被害者は早朝の出勤途中だった。青信号にもかかわらず、交差点で停止している被告人の車を見つける。その先の信号が赤だったため、被告人が勘違いして止まっているものと思い、そのまま追い越して先の信号で停車した。
信号が変わって発進すると、被告人の車が右側から猛スピードで追い抜き、前方で急ブレーキをかけた。
車を降りた被告人は被害者の車に近づき、運転席側の窓を何度もたたいた。その衝撃は車体が揺れるほどだったという。
いったん自分の車へ戻ると、今度はクロスレンチを持って再び近づき、運転席側の窓をたたき始めた。
クロスレンチは重さ約1.3キロ、長さ約40センチ。3〜4回たたくと窓ガラスは割れて、そのまま被害者の顔や腕を殴ったという。
命の危険を感じた被害者は車をバックさせて逃げようとした。すると被告人は、野球の投球フォームのように大きく振りかぶり、クロスレンチを投げつけた。クロスレンチはフロントガラスに命中し、ガラスはクモの巣状に割れた。
一連の犯行について、被告人は捜査段階で「ところどころの記憶はあるものの、睡眠薬を服用していたために記憶が曖昧」と説明していた。
事件後に帰宅して、家族に「車にあおられた」「サイレン鳴ってヤバいと思って逃げた」などと話していたという。家族から出頭をうながされたが応じず、逮捕に至ったという。

