放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合ほか)に織田信長役で出演している小栗旬へのインタビュー。その模様を前週に引き続き紹介する。
【前編】「破壊神であることを決めた信長にとって、秀吉(池松壮亮)は自分の判断や考えが狂わないための最後の光」
『豊臣兄弟!』とは
豊臣秀長(小一郎/仲野太賀)を主人公に、天下人となる兄・秀吉(池松壮亮)を補佐役として支えた弟の目線で戦国時代をダイナミックに描く大河。連続テレビ小説「おちょやん」(同局)や、「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」(以上、TBS)などのヒット作で知られる八津弘幸さんが脚本を担当する。7月12日に放送された第27回では日本史最大のミステリーと言われる「本能寺の変」が描かれ、信長が家臣の明智光秀(要潤)によって討ち取られた。
「お前じゃない」は脚本になかった
――第26回で、秀吉と2人きりで話すシーンが印象的です
「今回、第25回(6月28日放送)のエピソードあたりから信長は引退を考えていたと思っていて。自分が引退した場合に誰にあとを任せられるだろうと思っていた時、第26回で秀吉から『殿と一緒に新しい世の中を作りたい。そして人々を喜ばせたい』という言葉を聞くんです。これだけ無理難題を押し付けてきても、まだ人を喜ばせたいと言っている彼なら任せられるかもしれない、と。幻の明智光秀(要潤)と顔を合わせるシーンで『お前じゃない』というセリフを言わせてもらっているんですが、もしかすると、信長は『秀吉が殺しに来てくれたら、喜んで死んだのに』と思っていたんじゃないかと思うんですよね。そこは、『豊臣兄弟!』の中で作り上げた織田信長として一本筋が通ったなと思っています」
――「お前じゃない」は脚本にはなかったセリフですか?
「脚本にはなくて、光秀と向き合った時に心の底から出た言葉として言わせてもらいました。目の前に秀吉が立っていて、『あなたが死んでくれないと次の世の中が来ません』って言ってくれたら、喜んで席を譲ると思えたのに、気難しい光秀が来るから許せないんですよね(笑)」
――次々と信じたい人から裏切られて本能寺を迎える流れについて、脚本を読んだ時の印象を教えてください
「文献などを読んでいると、信長って裏切られる回数がかなり多い人なんですよね。それは疑心暗鬼になるだろうし、信じることが難しい状況に追い込まれてしまっただろうと思います。ただ、松永久秀(竹中直人)の謀反について、信長は結果的に2回も許していて、相手に交渉材料と言い分があれば許す度量がある人だったのではないかという気がします。そんななかで、秀吉という存在は『どう考えても自分のことを裏切らなさそう』と思える大きな存在だったし、『こいつと兄弟になれたら俺の人生も違ったんじゃないか』と考えた瞬間もあったと思います。本能寺の変では、先ほども言ったように秀吉が殺しに来てくれていたら一番気持ちのいい幕引きになれたのでしょうけれど、そうではなかった。しかも、自分が引きずっていたトラウマである弟・信勝(中沢元紀)の幻影を見ながら『なんて俺は弱い存在だったんだろう』と思ったはずです。でも最後、信勝から『我らの一生、ろくなものではござりませんでしたな』と言われるんですが、そこだけは監督と相談して『お前はそう思っているかもしれないけど、俺は違う。未来を託せる人間が1人いるから、余裕で死んでいってやるよ』という気持ちでラストを迎えたつもりでいます」
――本能寺の変の場面の撮影はいかがでしたか?
「めちゃくちゃきつかったです(笑)。ラストシーンはロケだったのですが、やっぱり画が全然違いましたね、本当の火に囲まれるというのは。監督とお話しした時に、最初は『とにかく思い切り逃げる』という描写も考えました。自分が読んできた文献では信長は逃げ足が速かったとあったので、なぜ本能寺では逃げられなかったのか、ずっと謎だったんです。でも、想像できる理由としては『疲れてしまった』ということだと思っていて。恨みを作りまくってしまったから、たとえここで逃げられたとしても、いつ殺されるかわからない不安の中で生き抜かなければいけない。そう考えた時に『もう疲れちゃったな』というのが一番だったんじゃないかと解釈しました。本能寺の変って、信長を演じてきた俳優の一番の見せ場になりがちで、俳優のエゴが見えるのが嫌だったんです。あっさり死んでいきたいという思いもありましたが、結果的に折衷案のような形にはなっています。でも、ちゃんと物語に乗ったうえでメッセージを残して散っていけたと思います」
――本能寺に至るまでの明智光秀への思いを聞かせてください。
「弟・信勝の存在が絡むというのは、『豊臣兄弟!』ならではの納得のいく展開だなと思いました。光秀に対しては、『この人(信長)をやっぱり殺したい』って思われるくらいのシーンを撮ってきたと思います。本能寺ポイントはだいぶ光秀に貯めていきましたね(笑)。本能寺の変は諸説あってミステリーですが、『本当は死んでいない』という説もあるなかで、今回は確実に切腹をしているので、100%織田信長はあそこで死んだと思います(笑)」

