ゴッホ《夜のカフェテラス》は、宗教画だったのか?浮かび上がるイエスと使徒

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス》1888年、クレラー・ミュラー美術館蔵, Public domain, via Wikimedia Commons.

けれども、この絵を「ただの夜のカフェ」として見るだけでは、少しもったいないかもしれません。なぜなら、この作品には、宗教画のように読める要素がいくつも重ねられているように見えるからです。

そう考えた瞬間、《夜のカフェテラス》は観光地の夜景ではなくなります。星空の下で人々が集う“祈りの場”。そして、ゴッホが夢見た、もうひとつの《最後の晩餐》のようにも見えてくるのです。

カフェに集う12人の人々

まず注目したいのは、画面左側のカフェのテラスです。

黄色い光に包まれたテーブルのまわりには、人々が座っています。その人数は、12人前後に見えるとも言われます。そして中央付近には、白っぽい服を着た給仕のような人物が立っています。

この構図から、レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》を連想する人も少なくありません。

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス》拡大

もちろん、ゴッホ自身が「これは最後の晩餐を描いた」と明言したわけではありません。美術館の公式解説でも、本作はアルルのフォーラム広場にあったカフェの夜景として紹介されています。

つまり、これを宗教画と断定することはできません。

それでも、12人の人物、中央に立つ白い姿、食卓を囲むような場面を重ねて見ると、キリストと使徒たちの晩餐を思わせる読み方ができるのです。

一度そう見えてしまうと、カフェのテーブルはただの飲食の場ではなく、静かな儀式の場のように見えてきます。

黄色い光は、神聖な光にも見える

《夜のカフェテラス》で最も印象的なのは、やはり黄色い光です。

夜の絵でありながら、この作品は暗くありません。ゴッホは黒をほとんど使わず、青や紫、緑、そして鮮やかな黄色によって夜を表現しました。妹ウィルヘルミナに宛てた手紙の中でも、この作品について「黒のない夜の絵」といえるような説明をしています。

この黄色い光を、単なるガス灯の明かりとして見ることもできます。けれど、宗教画の視点で見るなら、それは人物たちを包み込む聖なる光のようにも見えてきます。

中央の白い人物の背後にある窓や柱を、十字架のように見る解釈もあります。
カフェの庇の下に広がる黄色い光は、まるで祭壇を照らす光のようです。

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス》拡大

つまり、この場所は酒を飲むカフェでありながら、同時に、祈りの空間にも見えるのです。

配信元: イロハニアート

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