「薬はあるのに満足度は低い」うつ病治療の課題―新ガイドラインがもたらす変化とは?

「薬はあるのに満足度は低い」うつ病治療の課題―新ガイドラインがもたらす変化とは?

患者さんと医師が“一緒に考える”診療へ

改定を貫く3つの考え方

加藤先生は、新ガイドラインを貫く3つの考え方を挙げました。

1つ目は「患者さんが主役」で、作成メンバーには、医師だけでなく薬剤師・看護師・心理職などの多職種に加え、うつ病の当事者とその家族も参加し、患者さんや家族の立場から寄せられた臨床上の疑問、推奨内容に関する意見も積極的に取り入れられました。

2つ目は「共同意思決定(シェアード・ディシジョン・メイキング:SDM)」です。医師が信頼できる情報を示し、患者さんの希望やこれまでの治療歴も踏まえて、治療方針を一緒に決めていく進め方を指します。医師任せでも患者さん任せでもなく、両者で選ぶのが特徴です。

3つ目は「測定に基づく診療(メジャーメント・ベースド・ケア:MBC)」です。妥当性が認められた評価尺度で症状を点数化し、治療の前後で比べられるようにします。患者さんが待合室で症状を振り返って記入する仕組みもあり、診察で伝え漏れが減るといいます。加藤先生は、この手法を取り入れた場合と取り入れない場合を比べた海外の研究をまとめた解析で、取り入れた場合に治療成績が10%以上良かったと紹介しました。

新たな治療薬なども解説

ガイドラインでは、本編に加えて「精神療法」「漢方薬」「薬物相互作用」などうつ病を治療している医療者や患者さんが知っておくと有効な7項目の情報が「トピックス」としてまとめられています。

その1つに「今後期待される治療」として、国際的に注目されている従来とは作用や系統が異なる抗うつ薬について説明しています。そのうち「ズラノロン」は2025年12月に承認され、日本でも使えるようになりました(ほかは2026年7月現在国内未承認)。

従来の抗うつ薬は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン(いずれも脳内神経伝達物質)といった「モノアミン」に作用する薬が中心でした。ズラノロンはこれらと異なり「GABA受容体」に作用する新たな機序の治療薬です。14日間の投与期間後に効果を判定したうえで6週間以上の休薬期間が設けられる点がユニークであり、「従来とは異なる治療アプローチとして、服薬を続けられない人など患者さんの状態やライフスタイルに応じて、新しい選択肢となる可能性があります」と、加藤先生は話しました。

配信元: Medical DOC

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