「この程度で救急車を呼んでいいの?」――自分や周囲の人が熱中症かもしれないと感じたとき、症状に応じて迷うことなく救急要請をできるでしょうか。「日射病」と呼ばれた時代の名残からか、今も医療機関の受診をためらう人は少なくありません。けれども、熱中症は重症化すれば命に関わる病気です。熱中症特集第3回「治療編」では、日本医科大学救急医学教室/武蔵小杉病院 救命救急科 准教授の神田潤先生に、救急車を呼ぶべき目安、現場でできる応急処置、病院での治療、そして回復後の注意点などについてお聞きしました。
「目安」に当てはまったら迷わず救急要請を
自分や周りの人が熱中症で危険な状態かもしれないと思ったとき、救急要請の判断について難しく考える必要はありません。目安は次の3つです(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」)。
①意識がない
②水を飲めない
③水を飲んでも改善しない
この3つに当てはまるときは、ためらわず救急要請を検討してください。
「意識がない」とは、呼びかけても反応がない、普段と比べて様子がおかしい、といった状態です。「水を飲めない」は、自分の力で飲むことができない場合も、体が受け付けない場合も含みます。「改善しない」は、具合が悪くて病院に行こうかと思った症状が、水を飲んでも良くならない、という意味だと考えてください。涼しい場所で十分な水分を取ってもだるさが取れない、足がつったのが治らない――そんなときは、受診を考えてください。
なお、必ずしも救急車でなければならないわけではありません。ぼんやりするけれど自分で歩ける、という人は、家族が運転する自家用車など安全な手段で病院へ向かってもかまいません(ご本人が運転するのは避けてください)。一方で、①や②に当てはまるときは歩くことも難しいので、無理をせず救急要請をしてください。③の「改善しない」は、何分くらい様子を見ればよいのか判断が難しいでしょう。余裕があれば大人向けの救急安心センター事業「#7119」、子ども向けの小児救急電話相談「#8000」に問い合わせるのも一つの方法です。地域によって相談先がないなどの場合は、救急車を呼んでかまいません。
*#7119・#8000は、地域によって実施状況や受付時間が異なる場合があります。
「呼んでよかった」と言える空気を
熱中症の軽症例は脱水が主な症状で、点滴だけでとても良くなることがよくあります。だからといって、後になって「なぜ救急車を呼んだのか」などと、保護者や指導者、管理者が言わないことが大切です。そう言ってしまうと、次から救急車を呼んだり病院に行ったりしにくくなってしまいます。結果的に軽症で済んだことを良しとし、とがめない――そうした空気をつくっていくことが、重症者を減らすことにつながります。

