救急車を待つ間にできること
救急車を呼ぶような状況では、待つ間は基本的に無理をする必要はありません。到着までそれほど時間はかからないことが多いからです。ただ、夏場は救急要請が立て込んで、なかなか到着しないこともあります。その間にできることを知っておくのは大切です。
まず効果的なのは、暑い場所に居続けず、涼しい場所へ移動することです。そのうえで、氷のうや冷たいペットボトルを使って、脇の下や手のひらを冷やすのも有効とされています。
体に水をかけるのも有効です。ただし意識がないときは、むせたり誤嚥(ごえん:食べ物や水分が気管に入ること)したりする危険があるので、顔にかからないよう注意が必要です。また、水をかけて患者さんが濡れた状態になってしまうと、地域によっては救急車の設備に支障が生じることもあります。学校や工場など、水をかけることを検討できる場所では、あらかじめ消防に「水をかけてよいか」を確認しておくとよいでしょう。
救急車を呼ぶほどではない軽症や中等症で、自分で対処するときは、まず涼しい部屋で休み、水分を補給することです。水分は、経口補水液(水分と塩分、糖分などをバランスよく補えるよう作られた飲み物)のように、塩分を含む飲みやすいものがよいでしょう。ただし、それで必ず大丈夫とは言い切れません。涼しい場所で休んで水分を取っても良くならないときは、先ほどの3つ目「水を飲んでも改善しない」に当てはまりますので、受診してください。
治療は積極的冷却と輸液
熱中症に、特別な薬による治療はありません。重症のときは、体の内部の温度(深部体温)を測りながら、積極的に体を冷やす「アクティブクーリング(積極的冷却)」を行います。あわせて、失われた水分と電解質を補う点滴(輸液)も重要です。ただし、点滴だけでは十分に体を冷やすことはできないため、冷却の処置と組み合わせることが欠かせません。
冷やし方は、医療機関の設備や状況によってさまざまです。古くからよく使われているのは、体に水分を吹き付け、扇風機で蒸発させて気化熱で熱を奪う方法です。氷水に全身を浸ける方法をとる施設もあります。体の表面を冷やすことで、体の奥(深部)まで冷えていきます。これは世界中で行われている考え方です。日本救急医学会も全身を冷やすことを推奨しています。
どの冷却法が優れているかを比べた研究は乏しく、特定の方法だけをすすめてはいません。まず冷やすこと自体が大事だからです。
最近では、専用の高度な体温管理機器を使って体温を管理しながら冷やす施設も増えてきました。水を吹き付けたり氷水に浸けたりする方法は、多くの人手と訓練を要し、何人もの患者さんが同時に運ばれると対応が難しくなります。高度な体温管理機器は、2026年6月の診療報酬改定で公的医療保険の対象となったこともあり、今後は導入する医療機関が増えていくと見込まれます。

