「膀胱は取りたくない」――BCGが効かない膀胱がん、温存治療の選択肢となる新薬が登場

「膀胱は取りたくない」――BCGが効かない膀胱がん、温存治療の選択肢となる新薬が登場

膀胱(ぼうこう)がんは、5年生存率が73.3%(がん情報サービス、2009~2011年)と死亡率は高くないものの、一部の患者さんでは治療の過程で膀胱全摘出になりQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼすことがあります。従来は膀胱全摘が推奨された患者さんに、新たに膀胱温存治療の選択肢となる治療薬が国内でも承認されました。フェリング・ファーマが2026年6月16日に東京都内で開催したメディアセミナーで、筑波大学医学医療系 腎泌尿器外科 教授の西山博之先生と、聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科学 主任教授の菊地栄次先生が、膀胱がんの従来の治療と新たに登場した治療選択肢の意義、そしてその治療がどのように働くのかなどについて講演しました。概要をご紹介します。


「膀胱を取るしかない」とされてきた人に新たな選択肢―西山先生の講演

 

膀胱がんは、進み具合によって大きく以下の3つに分けられます。

・膀胱の筋肉の層まで達していない「筋層非浸潤性」
・筋肉まで及んだ段階
・転移した段階

西山先生によると、膀胱がんのうち約7割を占める筋層非浸潤性のうち、再発したり筋肉まで進んだりしやすいタイプは「高リスク」と呼ばれ、慎重な治療が必要になります。

高リスクの筋層非浸潤性膀胱がんでは、BCG膀胱内注入療法が標準的に行われてきました。BCGとは、ウシ型結核菌を弱毒化した生ワクチンを膀胱内に注入する治療で、免疫の力を利用してがんを抑えます。西山先生は、この治療で6〜7割の人は再発せずに済む一方、最初だけBCG療法を受けた人の3~4割、再発予防目的で2~3年治療を続けた人でも2〜3割程度は膀胱内に再発すると説明しました。

十分なBCG療法を行っても1年以内に再発する状態は「BCG不応性」と呼ばれ、高リスク患者さんの約10〜15%にみられるとされます。西山先生は、これまで国内のガイドラインでは、BCG不応性と判断された場合、筋肉に達していない段階でも膀胱をすべて摘出する「膀胱全摘術」が推奨されてきたと述べました。

しかし実際には、膀胱全摘術を受けた人は一部にとどまり、多くの患者さんが何らかの形で膀胱を残そうとしてきた実態もあると、西山先生は国内学会のデータを引きながら指摘しました。「膀胱は取りたくない」という患者さんの思いと、限られた選択肢との間に、長く隔たりがあったと言えます。

承認された遺伝子治療がもたらす変化

BCGが効かなかったり使えなかったりする場合、アメリカのガイドラインでも膀胱全摘が第一推奨ですが、ほかにも2種類の薬剤の膀胱内注入療法という選択肢があります。ただ、これまでそれらの薬剤は国内未承認のため、日本のガイドラインでは膀胱全摘か治験の2つしか選択肢がなかったのです。

2026年5月に国内承認された「エドスチラドリン膀胱内注入液」(一般名:ナドファラゲン フィラデノベク)はアメリカのガイドラインでも推奨されている薬剤の1つで、膀胱全摘を避けたい患者さんの思いと治療選択肢の隔たりに対する新たな選択肢として位置づけられます。

西山先生は、膀胱全摘術が推奨される状況は変わらないものの、膀胱温存を希望する場合に欧米で使われてきた治療を国内でも受けられるようになった点が、今回の大きな変化だと述べました。

配信元: Medical DOC

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