突然、これまでに経験したことのない強い胸や背中の痛みが現れた場合、その背景には重大な病気が隠れていることがあります。その代表的なものの一つが大動脈解離です。大動脈解離は発症が急で、短時間のうちに状態が変化することがあるため、早期の気付きと対応が重要な疾患です。一方で、症状は多様で、ほかの病気と見分けがつきにくいことも少なくありません。
この記事では、大動脈解離の基本的な仕組みや症状に加え、痛みの特徴や注意すべきサイン、受診の目安について解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
大動脈解離とは

大動脈解離がどのような状態で、どのような症状をきたすのかを理解しておくことが、早期発見の第一歩となります。
大動脈解離の概要
大動脈は、心臓から送り出された血液を全身へと運ぶ役割を担う重要な血管です。その壁は層構造になっており、何らかのきっかけで内側に傷が生じると、血液が壁の中へ入り込み、本来の血管とは別の通路が形成されます。
この状態が解離と呼ばれるもので、血液の流れが分断されることで、さまざまな臓器への血流に影響が及ぶ可能性があります。進行の仕方や範囲によって重症度や治療方針が大きく変わる点も特徴です。
大動脈解離の症状
大動脈解離は、突然の強い痛みが最初のサインとなることが多く、胸や背中を中心に鋭い痛みとして感じられることがあります。痛みは一定ではなく、時間とともに場所や性質が変わる場合もあります。
さらに、血流の異常によって全身にさまざまな影響が及び、息苦しさや意識の低下、手足の動かしにくさなどがみられることもあります。場合によっては、ほかの疾患と区別が難しい形で症状が現れることもあるため、経過を含めた評価を行います。
大動脈解離で早期発見・治療が必要な理由

大動脈解離は、発症後の経過がとても速く、時間の経過とともに状態が悪化する可能性がある疾患です。特に心臓に近い部位で解離が起こった場合には、短時間で重篤な合併症につながることがあります。
例えば、大動脈の破裂や心臓への影響、脳や臓器への血流低下などが起こると、命に関わる状態に進行することがあります。こうした変化は発症直後から進むことがあり、早い段階で診断と治療を行うことが重要です。
また、大動脈解離は症状が多様で、ほかの疾患と見分けがつきにくいことも少なくありません。そのため、典型的な症状だけでなく、経過や全体の状態を踏まえて判断することが求められます。
早期に適切な対応が行われれば、重篤な合併症を防ぎ、予後の改善が期待できます。逆に、対応が遅れると治療の選択肢が限られる場合もあるため、異常を感じた時点で速やかに医療機関へつなげることが重要です。

