■東洋医学で見る夏土用とはどのような時期か
東洋思想では、季節の変わり目を「土用(どよう)」と言います。「土用」とは、四季の始まりである立春、立夏、立秋、立冬の直前18日間のことです。年4回ある「土用」は、それぞれ、春土用、夏土用、秋土用、冬土用と呼ばれます。
2026(令和8)年の暦で言うと、以下のようになります。
冬土用は 立春(2月4日)の前18日間(1月16日~2月3日) 春土用は 立夏(5月5日)の前18日間(4月17日~5月4日) 夏土用は 立秋(8月7日)の前18日間(7月20日~8月6日) 秋土用は 立冬(11月7日)の前18日間(10月20日~11月6日)
西洋医学では、臓器そのものを指す時「臓腑」と言います。東洋医学では、臓腑の臓器やその働きを含めて「蔵府」と書き表します。東洋医学では、春は肝蔵、夏は心蔵、秋は肺蔵、冬は腎蔵、「土用」の時期は脾蔵が旺盛に働くと考えられています。
「土用」の時期は、脾蔵(脾臓や胃)に関連した臓器に負担がかかり、不摂生をするとその臓器機能が低下しやすい時期と考えます。
7月20日~8月6日の時期は、関東の梅雨明けと重なることが多く、古くから湿気を日光で飛ばすために本や道具を整理する「土用干し」が行われました❶。梅干しの「天日干し」❶、田んぼを乾かす「中干し」も、この時期の重要な作業です❷。梅雨の空気を一変させるほど、力強い日差しへと切り替わる時期が、「夏土用」です。
「夏土用」は、暦の上で最も暑いとされる「大暑」と重なります❸。2026年は7月23日(木)が「大暑」です。各地で梅雨が明ける頃です。この時期のお天気は、年間を通して最も暑さが厳しい「盛夏」となります。同時に、食欲が低下する時期でもあります。
菅原道真ではなく、江戸時代の蘭学者・平賀源内が発案したと言われる「夏土用の丑の日(7月26日)に鰻(うなぎ)を食べる習慣」は、4回ある「土用」の中で、日本人に最も馴染み深い「土用」かもしれません。
「土用」の過ごし方いかんによっては、夏バテや冬バテを引き起こします。2025年11月19日発売の『知らないうちに寿命を縮める危ない生活習慣24』(清野充典著・小学館) には、「土用」の時期の過ごし方や普段の生活で注意すべき習慣を紹介していますので、ご一読ください。
■夏土用は酷暑の始まりか
ここ数年、夏の暑さが厳しくなり、2026(令和8)年4月17日には40℃以上の日を「酷暑日」とする用語が作られました❹。今年も早くから暑くなると思っていましたが、5月6月は、それほど気温が上がりませんでした。7月に入り、9日(木)から急に気温が上がり始めました。暑熱順化が出来ていない人は、熱中症の恐れがありますので、今からでも対策が必要です❺。
「春土用」は「湿度の急上昇と気温の変動」を感じる時期ですが、「夏土用」は「高温・多湿の持続」が最大の特徴です。一年で最も体力を消耗する時期ですので、夏土用は心身の健康を守る準備期間とも言えます。
暦の上では「夏土用」が終わると「立秋」です。一見涼しいイメージですが、実際は暑さの本番です。近年は、年間を通して暑い日が多く、夏の期間が年々長くなっています。東京における直近5年間の気温でみると、30℃を超える「真夏日」の出現が5月中旬から10月中旬まで続きます。70年前と比べて約3週間長くなっています❻❼。
清野鍼灸整骨院分院がある東京都府中市では、「夏土用」に差し掛かる昨年7月20日頃から、最高気温が35℃(猛暑日)を下回らなくなり、8月半ばには40℃を超える「酷暑日」が出現しました。
暑さの感じ方は、同じ気温でも場所によって異なります。沿岸部は海風があるため涼しさを感じますが、都市部では「ヒートアイランド現象」が起きるため厳しい暑さを感じます❽。人工物に覆われた都市では、コンクリートが日中の熱を溜め込み、夜間も熱を放出し続けるため、最低気温が下がらない傾向にあります。過去100年間を振り返ってみると、日本全国の上昇気温が平均約1.2℃に対し、東京都では約3℃上昇していると言われています。
都市部ではビル群が風を遮ることにより、湿気が停滞して体感温度が上昇します。2026年はエルニーニョ現象の影響も指摘されており、夏の平均気温が例年以上に厳しくなるだろうと予想されています❾❿。近年の「夏土用」は、以前のような「夏の終わり」ではなく「酷暑の始まり」と云えるかもしれません。

