【千葉県立美術館・取材レポート!】印刷博物館の名品コレクションで出会う、美しき印刷の世界

奈良から江戸時代へ、広がる日本の印刷文化

百万塔陀羅尼(相輪)『百万塔陀羅尼(相輪)』 764〜770年 印刷博物館蔵

日本の印刷は、中国の木版技術が朝鮮半島を経由し、奈良時代に伝わったことに始まります。初期の印刷物はほとんどが仏書で占められ、その起源をたどると『百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)』にたどり着きます。

これは称徳天皇の発願によって764~770年に製作された、制作年が明らかな世界最古の印刷物。現在は法隆寺に多く伝わっており、木版または銅凸版で刷られたと推測されています。

『明朝紫硯』大岡春卜 画『明朝紫硯』 大岡春卜 画 序刊 1746年 印刷博物館蔵

印刷技術が一気に進展した江戸時代になると、物語や学問などさまざまなジャンルで、庶民向けの印刷物が広く流通しました。日本で初めて挿絵入りで出版された古典文学作品の嵯峨本『伊勢物語』や、日本初の色刷り画譜として中国・明代の花鳥画を写した『明朝紫硯』なども、それぞれ貴重な書物と言えるでしょう。

『朝陽閣鑑賞』とは?印刷局が挑んだ、美術工芸の石版再現

『朝陽閣鑑賞』大蔵省印刷局 印刷・発行『朝陽閣鑑賞』 大蔵省印刷局 印刷・発行 1883年 印刷博物館蔵

幕末・明治時代にかけては、活版や石版といった西洋の印刷が実用化され、日本の印刷は大きく飛躍します。その象徴として取り上げたいのが、明治時代に大蔵省印刷局から発行された『朝陽閣鑑賞』と呼ばれる書物です。

朝陽閣とは、印刷局の別称。当時の印刷局では石版技術を広めるため、さまざまな美術品を石版にて再現し刊行していました。さて、これは一体何を写した作品だと思いますか?

答えは、興福寺金襴をはじめとした名物裂と呼ばれる古裂(こぎれ)です。1ページにつき十色前後もの版が重ねられ、まるで本物の裂を貼りつけたかのように、一本一本の繊維までを細やかに描き出しています。写真では分かりにくいかもしれませんが、小さくとも魅力あふれる作品として、思わず顔を近づけて見入ってしまいます。

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