「風、薫る」第83回(7月22日放送)【振り返り】
第83回では、物語が「母娘の再会」からさらにもう一歩踏み込み、新たな局面へと進んだ。実母の文が胃がんで余命わずかと判明し、看護師として患者を支えるべきか、それとも娘として寄り添うべきかと、直美が初めて「看護」と「家族」の間で揺れ動く姿が丁寧に描かれた。一方、その苦悩を1人で抱え込もうとする直美を支えたのは、血のつながりではなく、一ノ瀬家で築いた家族の絆。物語は、医療ドラマとしての側面だけでなく、「家族とは何か?」というテーマをより鮮明に浮かび上がらせていく。
【以下、ネタバレ】
新潟の舎監室でりんは直美からの手紙を読んだ。そこには、文が直美の母親だったということが書かれていた。
直美が文の部屋を訪れた日、文が突然血を吐いてその場に倒れ込んだ。直美は帝都医大病院の外科助教授・藤田邦夫(坂口涼太郎)のもとへ駆け込み、往診を頼む。文の部屋で触診を終えた藤田は、文に「酷い胃炎かと。入院をお勧めしますが」と告げたが、外へ出ると直美に「胃に硬いしこりがある。おそらくがんだ」と宣告する。すでに全身に転移しており、手術や治療の手立てがないことを伝えた。絶句し、頭を下げる直美に藤田は、「医者は治療法がない人にできることはほとんどない。痛み止めの薬を与えるくらいで…。でも治らない患者にも、病院に来られない患者にも、日々看護は必要だから…。頑張って」と温かい言葉をかける。
部屋に戻った直美は、藤田の思いやりを汲んで明るく振る舞うが、文は「もう十分」と言い、「ここへはもう来なくて結構」と静かに拒絶した。直美は「来ます。看護婦として患者さんを見るのは当たり前ですから」と譲らなかった。
心に抱えた重圧は直美をじわじわと追い詰めていった。家では眠ることができず、病院の備品チェックでも凡ミス。直美の限界は近づいていた。大きな不安と孤独を抱え、とぼとぼと家路につく直美。すると突然、「直美さん!」と呼びかける声が響いた。振り返ると、新潟にいるはずのりんがいた。りんが帰京したのは環の手紙がきっかけで、直美の異変に気づいた幼い環が、りんへ「直美さん、大変すぐかえってきて」と書いた手紙を出していた。
その晩、直美は文が胃がんで余命いくばくもないことを吐露。「どうするのが文さんのためになるのか、わからなくて…」と自問自答した。りんは「それは…違うよ」と力強く言い放ち、直美は文の子供なのだから、自分の気持ちを優先すべきだと助言。「看護婦しなくていい。こんな時くらい」と寄り添い、そっと直美の手を握った。
朝ドラ「風、薫る」とは?
大関和と鈴木雅という実在した2人のトレインドナース(正規に訓練された看護師)をモチーフにした朝ドラ。激動の明治時代、まったく違う境遇に生まれ、それぞれ生きづらさを感じていた2人の女性が、未開の看護の道を切り開いていく姿を描く。「あなたのことはそれほど」「病室で念仏を唱えないでください」「くるり~誰が私と恋をした?~」などの連ドラで知られる吉澤智子さんが脚本を書き、Mrs. GREEN APPLEが主題歌「風と町」を歌う。

