●地方では珍しくない「祖父の土地のまま」
ところが、その「後回し」が思わぬトラブルを招くことがある。
Aさんは、近所の人から「うちの農地を貸してあげようか」と声をかけられたことがあった。念のため登記簿を確認すると、所有者は40年前に亡くなった祖父のままだったという。
「本人は『ちゃんと相続をした』と言うのですが、県内外に兄弟が何人もいます。本当にその人が所有者なのかわからない。後で権利関係で揉めたくないので、泣く泣く借りるのを断りました」
農地を貸し借りするには、原則として農業委員会の許可が必要だ。しかし、相続未登記農地では、権利関係を確認できず、許可手続きも進まない。
その結果、正式な手続きを経ず、当事者間だけでこっそり貸し借りする「ヤミ小作」が横行する温床となってしまうこともあるという。
●数世代前で登記が止まると「相続人」は数十人に
相続未登記農地の問題は、そのまま放置していても表面化しないことが少なくない。しかし、次の相続が発生したときに、一気に深刻なトラブルに発展する。
Aさんはこう話す。
「親の農地を相続しようとしたら、登記が数代前で止まっていて、戸籍をたどりながら何十年も前の相続人を探すことになり、困惑する人も少なくありません。
また、親がヤミ小作でこっそり他人に貸していた場合、土地を整理しようとした際に小作人との間で『返す』『返さない』で揉めやすいですね」
登記が数代前で止まっているケースでは、相続人が数十人に及ぶことも珍しくない。
県外に転出して所在がわからない人や、相続の話し合いに応じない人が一人でもいれば、手続きは一気に難航する。戸籍をたどる作業だけでも膨大な時間がかかり、専門家への依頼費用もかさんでしまう。
「面倒だから」と先送りしたツケを、何十年も後の子や孫の世代が背負わされることになるのだ。

