棚に並ぶジャン=ピエール・ウェイルの作品たち(Jean-Pierre Weill Studios提供)
「ガラスに描く」という発明——3Dペインティングとは
ジャン=ピエール・ウェイルの作品の最大の特徴は、絵が一枚の平面ではなく、間隔を空けて重ねられた複数のガラス層に描かれていること。
モチーフはパーツごとに分解され、それぞれ別のガラス面に描かれます。手前の層、中間の層、奥の層……それらを額の中で重ね合わせると、絵はまるでジオラマのような立体感をまとい、見る角度によって表情を変えはじめます。
パーツごとに描かれた絵が幾層にも重なり、独特の奥行きを生む(Jean-Pierre Weill Studios提供)
さらに面白いのは、光との関係です。ガラスに置かれた絵の具は、光を受けると背後の層に柔らかで繊細な影が生まれます。朝の光、夕方の光、照明の光——光が変わるたびに影の位置や濃さも変わり、静止しているはずの絵に、穏やかな「動き」と「時間」というエッセンスが加えられるのです。
角度を変えると絵の表情も変わる(Jean-Pierre Weill Studios提供)
日本でも2017年にWEBメディア「TABI LABO」で紹介され、「絵の中を覗くと、光と影が優しく交差していた」とその唯一無二の世界観が話題になりました。
はじまりは1992年——家族を支えるための挑戦
このユニークな技法が生まれたのは1992年。ジャン=ピエールが「家族を支えながらアートを続ける道」を模索していたときのことでした。
試行錯誤の末にたどり着いたのが、複数のガラスに絵を分けて描くという発想。光が透過し、影が自然に生まれ、絵に命が宿る——この発見に人々は魅了され、実験的な試みから始まったスタジオは口コミで少しずつ広がっていきました。
現在、Instagramのフォロワーは29万人を超え、作品は世界中のコレクターや贈り物を探す人々のもとへ届けられています。
