「風、薫る」第88回(7月29日放送)【振り返り】
第88回では、派出看護を始めた直美が社会的認知の低さという現実に直面する一方、りんは新聞記者・横沢公輔(井上祐貴)との出会いを通じ、自らの行き方を改めて見つめ直す展開になった。シマケンがつづった「いとしげ」という言葉がりんの背中を押す象徴として描かれ、自由や信念を貫こうとする横沢の姿、そして突然のプロポーズと、りんを取り巻く人々の思いが大きく動く回となった。
【以下、ネタバレ】
シマケンは、りんへの手紙では新潟のお国言葉「いとしげ」について長々と記していた。その手紙を読んだりんは、「『いとおしい』は昔、かわいそう、気の毒といった意味で使われていました。さらには困る。そして、大切に思う。僕は相変わらず役に立たない言葉を知るのが好きな自分がいとおしいです。この手紙を書くのが、いとおしい」というシマケンらしい言葉に触れ、りんはどういう意味かと笑う。その後、食堂で夕食を配膳しながら、生徒の長見久(近藤華)や岩瀬常(河村ここあ)らと夢について語り合う。生徒たちは縁談に恵まれいいところに嫁ぐのが夢だと述べた。
高越女学校の女子寮にいるりんを、横沢が訪ねてきた。看護について聞きたいという横沢に、りんは思わず看護に対する熱い思いや、これまでの人生を語ってしまう。横沢は、りんを「お見事」と大絶賛し、「見事に人生の岐路に立つたびに、真っ当な道を外れてきたんですね。一ノ瀬さん、やはり、あなたはとびきり面白い人だ。りんさんと呼ばせてください」と前のめりになる。横沢は自分について、社会を少しでもよいものに変えるため、新しい道を歩いているつもりだと語った。すると2人は、男が警官2人に捕まる場面に出くわした。男はただ演説を聞いていただけだと訴えるが、警官は話を聞かず、男に暴力をふるう。横沢は警官の前に立ちはだかり、「不当な暴力はやめたまえ! 言論には言論で返せばいい。こんな暴力を市民にふるうのは断じて間違っている。それが近代国家大日本帝国の巡査のすることか。恥を知れ!」と声を荒らげる。そして殴ろうとする相手に「私のことも殴りますか? 一体何の権限で? 私は記者です。言い分は記事にして差し上げますよ」と毅然と言った。2人は去っていった。
後日、りんは横沢からの手紙を読んでいた。「前略、りんさん、僕は今、高越監獄署にいます。理由は分かりませんが、分かります…。この社会は残念なことに、理想通りにはいきません。りんさんが心配です。ご無事なら顔を見せに来てください。差し入れがあるとなおうれしいです」。りんは校長の望月勘治(関智一)に相談するが、世間体を気にする望月は面会に猛反対した。
そのころ直美は、吉江に命名してもらった「恵風看護婦会」という看板を掲げて仕事を始めるが、依頼は少なく、依頼が来ても看護ではなく家事を押しつけられるなど、なかなかうまくいかない。
りんのもとにシマケンからの手紙が届く。「僕は相変わらずの日々で、小説もこの手紙もうまく書ける気がしません。ただりんさんに伝えたいのは、『舎監らしく』『先生らしく』ではなく…。りんさんらしくいるのが、ずっといとしげのように思います」。りんはシマケンの手紙を読みながら「私らしく…」とつぶやく。
迷いながらも、シマケンからの手紙に背中を押され、結局、横沢のいる監獄署を訪ねた。接見室に現れ、「りんさん! 来てくれたんですね」と笑顔になる横沢にりんは、飴を差し入れし、必要なモノの希望を聞いた。すると横沢が突然「結婚しませんか? 私と結婚してください」とプロポーズ。りんは急すぎる話に「しません、えっ、しません、しませんよ!」と慌てて断るが、そこで面会時間が終了する。横沢は「じゃあ今はそういうことで。ありがとうございます!」と明るく言い残し、監獄署の奥へ戻っていった。
朝ドラ「風、薫る」とは?
大関和と鈴木雅という実在した2人のトレインドナース(正規に訓練された看護師)をモチーフにした朝ドラ。激動の明治時代、まったく違う境遇に生まれ、それぞれ生きづらさを感じていた2人の女性が、未開の看護の道を切り開いていく姿を描く。「あなたのことはそれほど」「病室で念仏を唱えないでください」「くるり~誰が私と恋をした?~」などの連ドラで知られる吉澤智子さんが脚本を書き、Mrs. GREEN APPLEが主題歌「風と町」を歌う。

