見逃してはいけない「4つのサイン」
編集部
では、初発症状について具体的に教えてください。どのような変化に気をつければよいのでしょうか?
舛森先生
初発症状として注意してもらいたいサインは、主に以下の4つです。
便が細くなる
舛森先生
1つ目は「便が細くなること」です。大腸がんができると、腸の内側で次第に大きく盛り上がり、内腔が狭まります。その狭い通り道を便が通るため、便が細くなります。ただ、先ほどお話ししたとおり、上行結腸~横行結腸側ではまだ便が柔らかいために細くなりません。便が硬くなる下行結腸以降に腫瘍ができた場合に、この症状が出ます。たった1回細かったからといって心配しすぎる必要はありませんが、過去より明らかに細い状態が続く場合は注意が必要です。
便秘になる
舛森先生
2つ目は「便秘になること」です。がんによって腸が狭くなることに加え、がんが成長すると腸は蠕動運動が妨げられて動きづらくなり、便を送り出せなくなります。また、がんによる炎症で腸の動き自体が鈍くなることも原因です。便秘の悪化には気をつけてください。
貧血
編集部
便秘や便の太さの変化は日常的に起こりやすいので、見過ごさないようにしたいですね。ほかの症状はいかがでしょうか?
舛森先生
3つ目は「貧血」です。ほとんどのがんには「新生血管」というもろい血管が新しく作られて活発に増殖するという特徴があります。新生血管は便が通る刺激などで簡単に出血してしまいます。便器が真っ赤になるような出血ではなく、じわじわとダラダラ続く出血のため、気づきにくいのが厄介な点です。
以前「息苦しさ」を訴えて私のもとに受診した70歳の男性は顔面蒼白でした。正常値は10g/dL以上とされるヘモグロビン(赤血球の中に含まれるタンパク質で、貧血の指標となる)の値が4g/dLしかなく、検査の結果大腸がんが見つかりました。体のだるさや息切れ、顔が白くなるといった症状があれば、貧血を疑ってみてください。
血便、黒い便
編集部
息苦しさが大腸がんからの貧血だったとは怖いですね。出血というと「血便」もありますか?
舛森先生
はい、4つ目がまさに「血便」です。お尻に近い大腸後半(下行結腸~S状結腸)からの出血であれば、赤い血が便に混じります。ただ、赤い血だけでなく「黒い便」にも要注意です。
体内に長く滞在した血液は酸化して黒くなります。その黒さは「イカ墨やタールと同程度に真っ黒」なのが特徴です。なお胃の消化液に触れても血液は黒くなるため、胃潰瘍などが原因の可能性もありますが、大腸からの出血のサインである可能性も否定できないため、真っ黒な便が出たら早急に病院を受診してください。
大腸がんのリスクを高める「5つの要因」
編集部
症状についてはよく理解できました。次に、大腸がんの予防について伺います。そもそもどのようなリスク要因があるのでしょうか?
舛森先生
押さえておくべき5つのリスク要因を説明します。
赤身肉・加工肉の大量摂取
舛森先生
まず1つ目は「赤身肉と加工肉」です。牛肉や豚肉などの赤いお肉(鶏肉は含まれません)を1日100g以上、ソーセージなどの加工肉を1日50g以上食べるとリスクが上がると言われています。外食のハンバーグが1食150g程度と考えると加工肉50gは大分少量ですよね。
赤身肉・加工肉がなぜ危険かというと、赤身肉は便秘を招きやすく、腸内で悪玉菌が増えやすくなるため、腸内環境が崩れてがんのリスクにつながると考えられています。
また、加工肉の場合、亜硝酸塩などの保存料が体内で炎症を起こしたり、塩分過多で高血圧を招いたりすることがリスク要因となります。
運動不足と肥満
編集部
ほかに気をつけるべき要因はありますか?
舛森先生
2つ目は「運動不足」、3つ目は「肥満」です。
運動が不足すると腸の動きが鈍り、便秘がちになるため大腸がんのリスクが上がります。肥満に関しては、BMI(体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)が25以上の人が該当者です。たとえば、160cm/50kgの人なら、50 ÷ 1.6 ÷ 1.6 で計算できます。
過度な飲酒(お酒の飲み過ぎ)
舛森先生
4つ目は「過度な飲酒」です。ビール大瓶1本、日本酒1合、グラスワイン2杯以上を毎日飲むと、大腸がんのリスクが1.4倍になるというデータがあります。特にお酒で顔が赤くなる人は、アセトアルデヒドというアルコールの代謝過程で産生される有害物質が体内に溜まりやすく、食道がんなどのリスクも上がるので注意してください。
喫煙(タバコ)
舛森先生
最後に5つ目が
「タバコ」です。タバコには発がん性物質が含まれており、大腸がんのみならずさまざまながんのリスクを高めます。ただし、何歳からでも禁煙すれば肺機能はゆっくり改善するというデータもあります。健康維持のためには、前向きに禁煙を検討してみてください。
【知っておきたい最新情報】大規模研究でも「赤身肉100g/加工肉50g」の基準は妥当
2025年にGeroScience誌において発表された大規模なシステマティックレビュー・メタアナリシス(複数の研究を統合して分析する信頼性の高い手法。1990〜2024年の前向きコホート研究等を統合) でも、赤身肉摂取の多い群では大腸がんリスクが約1.15倍、加工肉摂取の多い群では約1.21倍に上がるというデータが改めて確認されています。
また国際がん研究機関(IARC)は、加工肉を1日50g追加して摂取するごとに大腸がんリスクが約18%上昇すると試算しており、「100g/50g」という基準は最新データでも変わらず妥当だといえます。
(出典:Menyhart O et al. GeroScience. 2025)

